1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640626
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉岡 明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (90193367)
|
Keywords | 有機磁性体 / スピン分極ドナー / 基底四重項分子 / ニトロニルニトロキシド / チアンスレン / ESR |
Research Abstract |
有機磁性体ならではの物性発現開拓のための磁性分子の高機能化を目指し、電子授受等によりスピン多重度の制御が可能な分子を設計・合成することを目的として研究を行った。既に申請者は電子の授受により基底三重項となる種々の開殻ドナー・アクセプター分子を設計・合成し、その分子内強磁性的交換相互作用の起源について解明しており、この手法をさらに発展させ、複数のラジカル部を有するドナー分子の合成を行うこととした。具体的には、ラジカル部としては安定性と交叉共役系の作り易さの点で長所を有するニトロニルニトロキシドを選び、ドナー部として安定なカチオンラジカルを与えるチアンスレンを用いた。ニトロニルニトロキシドの2,7-及び2,8-置換チアンスレン体は対応する臭素化物より合成した。異性体の帰属はX線結晶構造解析により行った。これらの溶液のESRスペクトルはいずれも二つのニトロニルニトロキシドが磁気的相互作用した9重線を示し、g値、結合定数は全く同じ値を有していた。SQUIDを用いてこれらの結晶の磁化率の測定を行ったところ、二つのスピン間に2,7-体は強磁性的、2,8-体は反強磁性的相互作用をもつことが明らかとなった。またこれらをTHF溶液中ヨウ素酸化し、77Kで測定したESRスペクトルはいずれも四重項由来の強い微細構造シグナルを与えた。これはチアンスレンのドナー部が一電子酸化され生成したカチオンラジカルと二つのラジカル部が強磁性的に結合していることを示す結果であり、基底三重項または基底一重項のジラジカルが中性状態のスピン多重度に関わりなく一電子酸化により四重項へ変換されたことを示している。一電子酸化により、より多くのスピンを整列させる系については現在検討中である。
|
-
[Publications] T.Sugawara: "Molecular Magnetism : Present and Future" Mol.Cryst.Liq.Cryst.305. 41-54 (1997)
-
[Publications] J.Nakazaki: "Ground State Spin Multiplicity of Cation Diradicals Derived from Pyrroles Carrying Nitronyl Nitroxide" Mol.Cryst.Liq.Cryst.306. 81-88 (1997)
-
[Publications] H.Sakurai: "Preparation and Property of Ionic CT Complex of Dimethylamino Nitronyl Nitroxide with DDQ" Mol.Cryst.Liq.Cryst. 306. 415-421 (1997)
-
[Publications] A.Izuoka: "Coexistence of Electric Conductivity and Magnetism in the Ion-Radical Salts of a Cross-Cyclophane Twin Donor" Mol.Cryst.Liq.Cryst. 306. 265-270 (1997)
-
[Publications] J.Tanabe: "Structure and Property of Cross-Cyclophane Twin Donors" Mol.Cryst.Liq.Cryst.296. 61-76 (1997)
-
[Publications] M.M.Matsushita: "Hydrogen-Bonded Organic Ferromagnet" J.Am.Chem.Soc.119. 4369-4379 (1997)