1998 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインの環化付加反応を基盤とする新しい芳香族合成法の開発
Project/Area Number |
09640628
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Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
松本 隆司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (70212222)
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Keywords | ベンザイン / 環化付加反応 / ベンゾシクロブテン / 環拡大反応 / ビアリール化合物 |
Research Abstract |
申請者らの開発したベンザインとケテンシリルアセタールとの環化付加反応により得ることが可能になった種々のベンゾシクロブテン誘導体の独自の潜在的有用性を開拓し、それを活用する芳香族合成法の展開を検討している。9年度の研究では、ベンゾシクロブテン誘導体の芳香族環化反応、環拡大反応や開裂反応について広く検討した。10年度の研究では、そこで得た知見を展開し、新しい光学活性ビアリール化合物の合成法の開発を試みた。 はじめに、上記の環化付加反応で得られるベンゾシクロブテノンを光学活性な1,3-ジオール誘導体と反応させて光学活性アセタールへと誘導し、これを利用して、さまざまな光学活性ベンゾシクロブテノンまたはベンゾシクロブテノール誘導体を効率的に合成する方法を開発した。次に、これらの化合物に対してアリール基を導入した後、その環拡大反応によりビアリール化合物を合成することを検討した。その結果、α位にアルケニル基とアルコキシ基を持つベンゾシクロブテノンに対し、種々のアリールリチウムを作用させると、カルボニル基への付加に引き続き、発生したアルコキシドが反応系内で直ちに環拡大反応を起こすことが明らかになった。得られた6員環アルコールは酸性条件に付すと速やかに脱水反応を起こし、ビアリール化合物(1-アリールナフタレン)を収率よく与える。 この一連のプロセスにより、ベンザインとケテンシリルアセタールとの環化付加反応に始まり、短行程でビアリール化合物を合成することが可能になった。ただし、現在のところ、出発物質の光学純度は環拡大反応の段階で大きく損なわれることも明らかになっている。そこで、これを立体選択的な合成プロセスとして確立すべく、環拡大の反応メカニズムの詳細をより明確にすることに立ち返り、引き続き検討を行っている。
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