1998 Fiscal Year Annual Research Report
ビニル位フッ素の分子内置換による含フッ素ヘテロ環化合物の高効率合成
Project/Area Number |
09640641
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Research Institution | KYUSHU INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
市川 淳士 九州工業大学, 工学部, 助教授 (70184611)
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Keywords | 含フッ素ヘテロ環化合物 / ジフルオロオレフィン / 分子内環化 / 付加-脱離過程 / 求核置換反応 / 縮合環化合物 / フルオロキノリン / フルオロイソキノリン |
Research Abstract |
gem-ジフルオロオレフィンは、求核剤を作用させると付加-脱離によって、フッ素の置換が容易に進行する。我々はこの反応を分子内に応用し、含フッ素ヘテロ環の効率的な構築法を検討してきた。昨年度は、オルト位にHOCH_2基等を有するgem-ジフルオロスチレンの分子内置換により、3-フルオロイソクロメン類が効率良く合成できることを報告した。また、本手法による5員環の形成も行い、求核的な5-endo-trigonal環化を経る2-フルオロインドール類の合成にも成功した。 本年度は、このo-置換gem-ジフルオロスチレンの分子内環化を、さらに広範なヘテロ環骨格の構築へと展開した。オルト位の置換基をTsNHCH_2基にすると、塩基(KH,NaH)処理によって3-フルオロイソキノリンあるいはそのジヒドロ体がそれぞれ選択的かつ高収率で得られた。イソキノリン骨格については他にも、オルト位のホルミル基を対応するオキシムへ変換することにより、分子内置換までが一挙に進行して3-フルオロイソキノリン=N-オキシドを与えた。また、オルト位アミノ基をジアゾ化後に還元すると、ジイミドの末端窒素原子による環化が進行し、3-フルオロシンノリンを収率良く合成することができた。さらに分子内求核種の新たな発生法として、オルト位に導入したシアノ基あるいはイソシアノ基に有機金属等の求核剤を作用させた。求核攻撃は官能基選択的に起こり、生じた分子内求核種から効率良く環化が進行して、1位あるいは2位への置換基導入を伴う二置換3-フルオロキノリン・イソキノリン両異性体の合成も可能となった。 このようにgem-ジフルオロオレフィンは、分子内求核種によるビニル位フッ素の置換を経由することで、環形成が円滑に行えることを明らかにした。これにより、従来困難な問題とされていた環炭素を直接フッ素化した各種ヘテロ環化合物の合成に対し、極めて有効な解決法を示した。
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