1998 Fiscal Year Annual Research Report
チオラト単核錯体の段階的集合化による系統的多核金属化合物の構築と不斉集合体の開発
Project/Area Number |
09640658
|
Research Institution | GUNMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
今野 巧 群馬大学, 工学部, 教授 (50201497)
|
Keywords | 硫黄架橋多核錯体 / 構造変換 / らせん構造 / チオレート型配位子 / 銀(I)イオン / 亜鉛(II)イオン / コバルト(III)錯体 / 単結晶X線構造解析 |
Research Abstract |
チオレート型配位子(RS)を三分子配位した八面体型単核錯体は、3つの硫黄原子を用いて金属イオンと結合し、単核錯体の自己集合体である硫黄架橋多核錯体を形成することが示されている。最近,反応させる金属イオンを八面体性のコバルト(III)から四面体性の亜鉛(II)へ変えることにより、全く異なった構造をもつ硫黄架橋多核錯体の形成が見出され、金属イオンの配位様式に基づいた多核構造の制御の可能性が示唆された。そこで本研究では、これまで研究例のない二配位直線性金属イオンと八面体型チオラト単核錯体との反応を行い、新種の硫黄架橋多核錯体の構築、ならびに単核錯体の集合化による新規物性の発現を目指した。 その結果、直線性金属イオンとして、硫黄原子との親和性が大きい銀(I)を選び、これを2-アミノエタンチオレート(aet)やL-システネート(L-cys)が配位したCo(III)チオラト単核錯体(fac(S)-[Co(aet)_3],fac(S)-[Co(L-cys-N,S)_3]^3)と反応させたところ、特異な三重らせん構造をもつ新規硫黄架橋Co^<III>Ag^I_3Co^<III>五核錯体([Ag_3{Co(aet)_3}_2]^<3+>,[Ag_3{Co(L-cys-N,S)_3}_2]^3)が得られた。その構造を、単結晶X線解析により決定するとともに、生成する異性体の分離、分割、および種々の分光化学的手法による異性体の同定を行った。このCo^<III>Ag^I_3Co^<III>五核錯体をIイオン存在下で過剰のコバルト(II)と反応させたところ、コバルト(II)の自然酸化を伴い、直線型硫黄架橋Co^<III>Co^<III>Co^<III>三核錯体へと構造変換することが分かった。このCo^<III>Ag^I_3Co^<III>五核錯体のIイオンを用いた構造変換反応は、直線型三核錯体のみならず、反応させる金属イオンを亜鉛(II)に変えることにより単核ユニットが4分子集合したCo^<III>Zn^<II>_4八核錯体へも拡張できることが明らかとなった。これらの実験により、直線性金属イオンによる単核錯体の集合様式を解明するとともに、金属イオンの配位様式による多核構造の制御を実証した。
|