1998 Fiscal Year Annual Research Report
磁場勾配NMRおよびESRによる超分子中の物質の移動とその応用に関する研究
Project/Area Number |
09640717
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Research Institution | Tokyo University of Fisheries |
Principal Investigator |
渡部 徳子 東京水産大学, 水産学部, 教授 (40092382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松川 真吾 東京水産大学, 水産学部, 助手 (30293096)
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Keywords | 水 / 多糖類 / ゾル-ゲル転移 / 円偏光二色性 / スピンプローブESR / コイル-ヘリックス転移 / 水素結合 / NMR緩和 |
Research Abstract |
1) 陽イオンによるジェランガムゲルのゲル化における糖鎖の会合状態の解明 ゲル形成過程においてダブルヘリックス間の会合が生じることは知られていたが、1価陽イオンを高濃度(80mM)に加えた場合にはランダムコイル間の会合も生じていることが明らかになった(第47回高分子学会年次大会及びISOPOW発表)。ゲル化機構ならびにゲル構造を水素結合の観点から論文にまとめた(論文2)。 2) ジェランガムゲルのゲルにおける架橋構造のESRによる解明 ゲル骨格構造は陽イオンの価数にはよらず同一であることが拡散計測の解析から示唆されたが、架橋点の微細構造に差があると予測される。2価陽イオンとしてCuイオンを採用しESRスペクトル変化から架橋点における配位構造と配位の強さを見積った。Cuイオンは2個のカルボキシル基により配位された平面四辺形錯体として架橋を形成するが、その結合の強さはグロクロン酸による配位に比べて弱い事が解った。 3) ジェランガムのコイル-ヘリックス転移における糖鎖の動的挙動に対する陽イオンの影響 ゲル化に先行してコイル-ヘリックス転移が起こるが、ヘリックス形成に対する1価陽イオンの種類と糖濃度の依存性をCD(円偏光二色性)計測により明らかとした(論文1)。転移温度はRb,Kにおいてより高温、Na,LiTMAにおいてより低温にシフトし、また高分子濃度の増加と共に高温側にシフトした。 4) デキストラン及びプルランの特異的水和構造と物性との関連 デキストランとプルランは共に中性の多糖である。前者はKイオンによりゲル化するが、後者はどんな条件下でもゲル化しない。プルランにおいては水分子との相互作用が極めて強くまたバルク水との交換が遅いことが高分子鎖間での架橋形成を阻害していると結論された(第47回高分子学会年次大会発表)。デキストランにおいては水分子と糖鎖間でプロトン交換が生じるがプルランでは生じないなど高分子鎖のコンホメーションの違いが水和構造に反映されている事例が見いだされた。この点の解明を続ける予定。 5) カードランの水和特性の研究 カードランのハイセットゲル、ローセットゲル形成過程における糖質の動的挙動及び水構造変化を水プロトンのNMR緩和、スピンプローブESRにより検討した。さらに凍結解凍過程におけるゲルの安定性、水分子の凍結挙動の違いなどを回転運動の相関時間を指標として明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tokuko WATANABE: "Structural Change of Polymer Chains of Gellan Monitored by Circular Dichroism." Progress in Colloid and Polymer Science. (1999)
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[Publications] Tokuko WATANABE: "Hydrogen Bonding Behavior of Gellan in Solution During Structural Change Observed by 1H NMR and CD Methods." Progress in Colloid and Polymer Science. (1999)
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[Publications] Shingo MATSUKAWA: "Swelling and Transport in Polyisoprene Networks Exposed to Benzene-Cyclohexane Mixtures:A Case Study in Multicomponent Diffusion." Macromolecules. 31(23). 8124-8133 (1998)
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[Publications] Tokuko WATANABE & Shingo MATSUKAWA: "Diffusion of Water and Polymer Chain in Polysaccharide Sol and Gel States Studied by PFGNMR,NMR Imaging and EPR." Internationa Symposium on Water Management and Distribution of Quality Foods.Book of Abstracts. 140 (1998)
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[Publications] T.WATANABE: "Changes in the Network Structure of Polymer Gels During Drying." Internationa Symposium on Water Management and Distribution of Quality Foods.Book of Abstracts. 123 (1998)
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[Publications] Tokuko WATANABE: "Specialist periodical Reports:Nuclear Magnetic Resonance,Vol27,Chapter 13,NMR Imaging." G.A.Webb(Royal Society of Chemistry of London), 431-457 (1998)