1998 Fiscal Year Annual Research Report
錯形成とイオン会合を駆動力とする高機能性分離・濃縮剤の開発と環境試料分析への応用
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09640719
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Research Institution | Toyama University |
Principal Investigator |
笠原 一世 富山大学, 理学部, 助教授 (40169404)
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Keywords | 分離・濃縮 / 吸着剤 / イオン会合 / キサンツレン酸結合型シリカゲル / 微量金属分析 / 非イオン界面活性剤 / 色彩色差計 / 環境水分析 |
Research Abstract |
キレート形成を原理とする水中の微量金属の前濃縮定量用吸着剤として、アミノプロピル化したシリカゲルの表面にキサンツレン酸をフェニルアゾ基を介して結合させたものを合成した。この吸着剤は、8-キノリノール結合型シリカゲルに比べ、約2倍の吸着容量(約50μmol/g)を持ち、多くの遷移金属イオンの前濃縮分離剤として優れた性能を持つことがわかった。pHを4〜〓の範囲に調節することによって、海水または河川水中の微量のCu、Ni、Cd、Co、Pb、V、Znなどを主成分である、Na、K、Ca、Mgなどから分離濃縮できた。富山湾の日本海固有水、能登半島の沿岸海水、富山市内の河川水などといった環境水試料の微量金属の前濃縮(100倍)に吸着剤を応用し、ICP-AESまたはGFAASによって測定したところ、Cu、Ni、Vなどは、μg/LレベルさらにCdは、数十ng/Lレベルといった濃度で存在することが明らかになった。また、水中のヒ素をヒモリブデン酸イオンとした後、テトラフェニルホスホニウムイオンとの会合体としてメンブランフィルター(MF)に捕集し、これを水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に溶解し、GFAAS定量することによってμg/Lレベルのヒ素の定量ができた。さらに、錯体の生成とイオン会合をその測定原理とした、排水中のポリエチレンオキシド型の非イオン界面活性剤の迅速かつ高感度なイオン対抽出吸光光度定量法を開発した。 一方、色彩色差計を使用する迅速な簡易分析法の開発の検討も行った。μg/LレベルのFe(II)、シアン化物イオン、オルトリン酸イオン等を有色化合物に変換した後、対イオンを加えてイオン会合体としてMF上に集め、ポータブル型の色彩色差計で、L^*a^*b^*表色系におけるその色相、明度、彩度を直接測定した。これらの数値から計算した色差と濃度との間にやや湾曲した検量線が成り立つ。この方法は簡便・迅速かつ高感度であり、現場分析に利用できる。しかも有機溶媒を必要としない利点がある。
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[Publications] 田口 茂 ほか: "溶媒不溶性及び可溶性膜を用いる陰イオン界面活性剤共存下での水中の陽イオン界面活性剤の分離と吸光光度定量" 分析化学. 47. 1035-1040 (1998)
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[Publications] 笠原一世 ほか: "キサンツレン酸結合型シリカゲルの合成とその環境水中の微量金属の前濃縮/定量への応用" 分析化学. 47. 1061-1067 (1998)
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[Publications] N.Hata et al.: "Membrane solubilization with tetramethylammonium hydroxide for the preconcentration and electrothermal alomic absorption spectrophotometric determination of trace amounts of arsenic in water" Analyst. 124. 23-26 (1999)