1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640739
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
長谷川 政美 統計数理研究所, 予測制御研究系, 教授 (60011657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 哲男 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 助教授 (50208451)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 分子系統樹 / 脊椎動物 / 真獣類 / ND1遺伝子 / 肺魚 / シ-ラカンス / 収斂進化 |
Research Abstract |
近年ミトコンドリアDNAの塩基配列の解析から、脊椎動物の系統進化がさかんに研究されているが、本研究ではこのような解析の問題点を検討した。 われわれの以前の研究から、ミトコンドリアの遺伝子のなかで、ND1遺伝子は、真獣類の目レベルの関係について他の大多数の遺伝子と食い違った系統樹を強く支持することが分かっている。その原因を明らかにするために、われわれは霊長類、げっ歯類、有袋類、単孔類、その他の哺乳類の多くの種について、ND1遺伝子DNAの塩基配列を決定した。その結果、この遺伝子では、霊長類とげっ歯類との間で収斂進化が起こっていることが明らかになった。 ミトコンドリアの全塩基配列データを用いて、肺魚、シ-ラカンス、条鰭類、四足動物の間の系統関係を、無顎綱のヤツメウナギをアウトグループとして推定したところ、四足動物と条鰭類とが姉妹群を成して、肺魚はこれらよりも遠い関係にあることが示された。この関係は既存のどの分子系統樹推定法を用いても非常に強く支持された。形態学的な証拠は、四足動物と肺魚が姉妹群を成すことを強く支持しており、分子系統学的な解析はこれとは大きく食い違うのである。もしも、分子系統学が示している関係が正しいとしたら、形態学的な証拠の解釈を全面的に見直すことが必要になる。分子系統学は、生物の系統関係を明らかにする上で有力な武器であるが、決して万能ではなく、さまざまな落とし穴が潜んでいる。従って、分子系統学から得られた上の結論も、さまざまな角度からの再検討が必要である。そのためにわれわれは、ヤツメウナギよりもイングループに近く、アウトグループとして用いるのに適切だと考えられるホシザメのミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定した。この新しいデータをアウトグループとして解析すると、肺魚が四足動物に近いという伝統的な系統樹が支持され、ヤツメウナサギの系統でなにか異常な進化が起こったことが示唆された。これらの結果を生かして、系統樹推定のためのモデルの改善を行なった。
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[Publications] Penny,D., Hasegawa,M.: "The platypus put its place" Nature. 387. 549-550 (1997)
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[Publications] Zardoya,R., Hasegawa,M.: "Searching for the closest licing relatives of tetrapods" Molecular Biology and Evolution. (印刷中).
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[Publications] Cao,Y., Hasegawa,M.: "Phylogenetic position of guineapigs reuisited" Malecular Biology and Evalution. 14. 461-464 (1997)
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[Publications] Cao,Y., Hasegawa,M.: "Comments on the quartet puzzling method" Molecular Biology and Evolution. 15. 87-89 (1998)
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[Publications] Cao,Y., Hasegawa,M.: "Conflict amongst individual proteins" Journal of Molecular Evolation. (印刷中). (1998)