1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640741
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助教授 (30192587)
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Keywords | 分子進化 / 分子系統樹 / ネットワーク法 / 最尤法 / ABO血液型 |
Research Abstract |
Rh式血液型の遺伝子産物は,12回膜貫通型の膜タンパクで,Rh遺伝子と相同性のあるRh50遺伝子の産物とともにヘテロテトラマーを形成して,赤血球膜表面上に存在するとされている。我々は,齧歯類においてのRh遺伝子とRh50遺伝子の進化のパターンを霊長類のものと比較するために,マウスとラットの大腿骨の骨髄細胞からRNAをAGPC法によって抽出し,degeneratePCR法およびRACE法によってcDNAの全コード領域の塩基配列を決定した。その結果,ヒトとマカクの間では,Rh遺伝子とRh50遺伝子の両方で非同義置換数の方が同義置換数よりも高く観察されたのに対して,マウスとラットの間では,Rh遺伝子とRh50遺伝子の両方で同義置換数の方が非同義置換数よりも高い値を示した。このことは,霊長類と齧歯類の間では自然淘汰のパターンの差異があるということを示唆している。また,我々はアフリカツメガエルとメダカのRh50-like遺伝子のcDNAの全コード領域の塩基配列を決定し,Rh遺伝子とRh50遺伝子のアミノ酸配列を用いて系統樹を作成し,それらの遺伝子の進化パターンの分析を行なった。その結果,哺乳類のRh50遺伝子とアフリカツメガエルのRh50-like遺伝子はクラスターを形成し,Rh遺伝子とRh50遺伝子の遺伝子重複の時期はメダカ,つまり硬骨魚類と他の脊椎動物との分岐前後に相当するというように推測された。また系統樹の枝の長さを比べてみると,Rh遺伝子の各枝の方が,Rh50遺伝子の各枝の方よりも,およそ3倍ほど長いことが示された。このことは,Rh50遺伝子の方がRh遺伝子よりも進化速度が遅く,より重要な機能を保持していると推測される。また,これらの遺伝子の祖先型はRh50遺伝子の方により類似したもので,それからRh遺伝子が分化してきたと考えられる。
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