1997 Fiscal Year Annual Research Report
カエデ属植物における性表現と性転換の至近要因と究極要因の解析
Project/Area Number |
09640743
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 淳 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30281976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 聡樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90272004)
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Keywords | カエデ / 性表現 / 性転換 / 繁殖コスト / 資源量 |
Research Abstract |
ウリハダカエデの性表現および性転換について以下のことが明らかになった。地上幹の性表現は、雄花のみ・雌花のみ・雄花+雌花の3パターンがあり第3の場合その混合割合はさまざまである。集団は強い雄バイアス下にあり、初回繁殖の幹はすべて雄花のみをつけた。結実率は高い。雌花を少しでもつけた非オス幹の死亡率はオスに比べて有意に高く雌機能による繁殖コストの大きさを示唆した。1990年までの調査では、性転換に明瞭な方向性は認められなかった(Matsui 1995)が、今回の調査によって以前オス個体とされた幹のなかから雌花をつけるものが現れた。これまでに雌花をつけた幹56本のうち44本の「メス度」が高くなった。これらからウリハダカエデの「成功的な」繁殖スケジュールは、1)繁殖開始時にはコストの小さいオスとしての繁殖を行いつつ栄養成長を続け、2)十分に繁殖に投資可能な資源を持つサイズになってから、メスとしての繁殖も行うようになる、3)さらにこのようなコースをたどれた個体は、高い種子生産によって過度に資源を消費したときには「メス度」を減少させて生存を確保するものと推測された。 青森県八甲田山のミネカエデ個体群では、1997年にあらたに206本の幹に標識をつけ性表現の調査を開始した。ウリハダカエデと同様、地上幹の性表現は雄花のみ・雌花のみ・雄花のみ・雄花+雌花のパターンがあることがわかった。ただしウリハダカエデとは異なり性比の偏りは顕著ではない。 個体(genet)の識別については、ウリハダカエデ・ミネカエデとも秋に葉のサンプル採取をおこなった。その一部についてDNA抽出を簡便な方法を用いて試みたが現在のところ成功していない。これはおそらくは、加齢した葉のために葉内にリグニンなどの二次代謝産物が蓄積していたためと考えられる。このためCTAB法の一種などより適当なDNA抽出法を検討中である。
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