1998 Fiscal Year Annual Research Report
カエデ属植物における性表現と性転換の至近要因と究極要因の解析
Project/Area Number |
09640743
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 淳 東北大学, 大学院理学研究科, 助手 (30281976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 聡樹 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (90272004)
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Keywords | ミネカエデ / ウリハダカエデ / 性表現 / 性転換 / 繁殖コスト / 資源量 / 雄雌異熟 |
Research Abstract |
八甲田山のミネカエデ個体群において、幹に標識し2年間にわたり性表現の調査をおこなった。場所により雪解け時期がばらつくことによる開花フェノロジーのずれがあるのと、花序内の花がすべて咲きおわるのに一定の期間を要するため、シーズン内に反復して観察した。 調査の結果以下のことが明らかになった。地上幹の性表現は雄花のみ(M)・雌花のみ(F)・雄花+雌花の3つのパターンがあった。ウリハダカエデにおいてはごくまれな例外をのぞいて1花序内の花はすべて雄花かすべて雌花かのいずれかであったが、ミネカエデでは同一花序内に雄花と雌花が混生する場合がしばしば見られた。雄花+雌花の性表現にはさらに、雄花が先に咲き後に雌花が咲く雄性先熟(MF)とその逆の雌性先熟(FM)の二つの場合があった。またどちらの場合も雄花と雌花の割合は連続的に変化した。この集団レベルでの性表現様式はHeterodichogamyと呼ばれるものにあたる(de Jong,1976)。1998年の性表現でみるとM:MF:FM:F=146:27:32:27で雄花のみをつけるものがもっとも多かった。これらの間で胸高直径を比較したところMF>FM>F>Mの順でMFとFMは有意にMより大きかった。雌雄同株のものが雄表現のものより大きいのはウリハダカエデと共通の傾向であった。これは種子生産というメスとしての繁殖にはより大きなコストがかかるため、それにみあう十分な繁殖に投資可能な資源が必要であることを示唆している。地上部の根際位置から推定した個体(genet)内には性表現の異なる幹が存在する場合があり、2年間で性表現が変化する例も断片的ではあるがとらえられたので、ミネカエデにおいてもなんらかの環境性決定が起こっている可能性が高い。これを解明するにはさらに調査を継続する必要がある。
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