1997 Fiscal Year Annual Research Report
炭素と窒素の相互作用が陸上生態系の動態に与える影響
Project/Area Number |
09640745
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
舘野 正樹 群馬大学, 社会情報学部, 助教授 (00179730)
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Keywords | 陸上生態系 / 窒素循環 / 競争 / 遷移 |
Research Abstract |
平成9年度は、窒素を巡る競争を生態系モデルに組み込んで解析した。その結果、窒素を巡る競争があると、初期には葉の寿命の短い植物(単位時間あたりの生産性は高いが、窒素の保持時間の小さいもの)が優占するが、時間と共に葉の寿命の長い植物(生産性は低いが窒素の保持時間の大きいもの)が優占するようになることが明らかになった。これは上記の2つのタイプの植物が同時に生態系に侵入しても、あるいは葉の寿命の長い植物が先行して侵入していても(バイオマスがあまり大きくはないならば)おきることも明らかになった。 このことは、屋久島の照葉樹林、日光の亜高山帯針葉樹林などで実際に観察されている遷移(あるいは森林の更新)のメカニズムを説明する。 しかし例外もあり、冷温帯の夏緑樹林の存在はモデルの予測とは矛盾するものである。そこで表日本の日光周辺で夏緑樹林が自然の状態で成立するのかどうかを、林床の稚樹の生長をもとにテストした。標高400mから800m付近のコナラ林、ミズナラ林の林床には、これら落葉樹の稚樹は存在せず、常緑針葉樹であるモミの稚樹が旺盛に生長していた。モミの稚樹は相対光量子密度3.6%程度の暗いスギ林の林床でも着実に伸長しており、これらの結果は日光の冷温帯ではモミがクライマックスとなり得ることを示している。おそらく現在の夏緑樹林は昭和40年代までの頻繁な伐採によって形成されたものであろう。モミが生育する標高より下部は暖温帯の照葉樹林であり、また、モミ林の上部には常緑針葉樹であるウラジロモミが亜高山帯まで生育していることを考えると、(少なくとも表日本では)遷移はモデルの予測とほぼ一致することが明らかになった。
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