1998 Fiscal Year Annual Research Report
海産底生動物個体群の爆発的分布拡大と絶滅における幼生分散と回帰の役割
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09640754
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
玉置 昭夫 長崎大学, 水産学部, 助教授 (40183470)
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Keywords | イボキサゴ / 絶滅 / ハルマンスナモグリ / メタ個体群 / 有明海 / 砂質干潟 / 生物攪拌 / 幼生分散と回帰 |
Research Abstract |
1.ニシキウズガイ科の巻貝イボキサゴが生息している有明海のすべての砂質干潟(10ヶ所)において、個体群組成と分布の調査を昨年度に引き続き行い、メタ個体群全体の絶滅危険度を判定した。昨年度に絶滅が予測されていた4ヶ所では実際にほぼ絶滅状態になった。また、干潟内の分布範囲、密度の高さ、年齢組成からみて再生産が最も健全に行われると判断される個体群は、昨年度の3ヶ所から1ヶ所(天草下島東岸)に減った。しかし、この干潟でも個体群密度は昨年度の値の74%に減っていた。このように、健全なsource個体群の少ない状態では、有明海個体群は昨年度よりさらに危険な状態に陥ったといえる。2.イボキサゴへの加害作用が予測されていたハルマンスナモグリ(甲殻十脚目)の各干潟における個体群密度と分布を調べた。その結果、スナモグリが160個体/m^2以上の高密度で生息するとイボキサゴの新規加入が阻害されることが明らかになった。また、スナモグリは巣穴形成のために10cm以上の深さの基質を必要とするため、イボキサゴの加入成功は干潟内の浅い砂層の分布に依存していることが明らかになった。3.野外および室内水槽におけるスナモグリの基質撹拌量をビデオ撮影により測定した。その結果、干潟表面への砂の再堆積速度は0.3-0.6cm(砂の厚み)/hとなり、殻径0.2mmのイボキサゴ新規加入個体を窒息死させるのに十分であることが明らかになった。4.有明海から橘湾を経て東シナ海に至る海域の多数地点で垂直曳きプランクトン採集を行い、スナモグリ幼生の分布の齢期にともなう変化を調べた。その結果、イボキサゴが分布する干潟周辺水域では、天草下島東岸北部から大矢野島にかけて齢期全体を通じて幼生が保持されることが明らかになった。このことが数カ所の干潟でスナモグリ個体群を高密度に維持し、イボキサゴ個体群をほぼ全滅に導いたと推察された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 玉置 昭夫: "有明海エスチャリーの砂質干潟におけるニホンスナモグリ個体群の爆発的分布拡大-なぜ浮遊幼生期を研究対象とするに至ったか" 日本プランクトン学会報. 45(1). 27-29 (1998)
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[Publications] 玉置 昭夫: "ニホンスナモグリ幼生の分散と回帰(予報)" 日本プランクトン学会報. 45(1). 29-31 (1998)
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[Publications] Akio Tamaki: "Burrow morphology of two callianassid shrimps,Callianassa japonica Ortmann,1891 and Callianassa sp.(=C.japonica:de Man,1928)(Decapoda:Thalassinidea)" Crustacean Research. No.27. 28-39 (1998)
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[Publications] Shin Miyabe: "The complete larval development of the ghost shrimp,Callianassa japonica Ortmann,1891(Decapoda:Thalassinidea:Callianassidae),reared in the laboratory" Crustacean Research. No.27. 101-121 (1998)
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[Publications] Raymond B.Manning: "A new genus of ghost shrimp from Japan(Crustacea:Decapoda:Callianassidae)" Proceedings of the Biological Society of Washington. 111(4). 889-892 (1998)
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[Publications] Takeshi Matsuno: "Distributions of water masses and currents in Tachibana Bay,west of Ari-ake Sound,Kyushu,Japan" Journal of Oceanography. (in press). (1999)