1997 Fiscal Year Annual Research Report
多回交尾システムを持つ直翅目昆虫における精子競争の適応的意義
Project/Area Number |
09640758
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
小野 知洋 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (50125192)
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Keywords | 直翅目昆虫 / オンブバッタ / Atractomorpha lata / 体色多型 / 体サイズ / 配偶者選択 |
Research Abstract |
非常に頻繁に交尾をおこなうオンブバッタにおいて、配偶者選択があるのか、あるのであれば体サイズはその指標になるのかという点を調べるため、約2ヶ月にわたって室内飼育個体の行動を記録した。この観察においては本種のオンブ行動はすでに交尾後警護行動であることがわかっているので、交尾およびオンブ行動を記録した。また、本種には体色多型があるので体色を記録するとともに、すべての個体の体サイズを測定した。 まず飼育した個体全体をみると、雌雄とも羽化時期が後になるほど体サイズが小さくなること、また、一般に雌では褐色タイプは大きく、緑色タイプは小さいことが明らかとなった。つぎに、全観察期間の8割以上生存し観察が行われた個体の結果をまとめると、雌雄ともに体サイズと交尾頻度に相関はなく、また、体色タイプ間で交尾頻度に差はなかった。しかし、雌雄を体長の平均値によって大型・小型に二分して、それぞれの中で、交尾頻度との相関を見ると、雌では小型個体で体サイズに依存した交尾頻度の増加がみられ、大型個体では逆に逆依存した減少がみられた。しかし、雄ではいずれも相関はなかった。 ところで、8月と9月の羽化個体を比べると、雌雄とも8月の方が体サイズが大きい。そこで観察個体を8月と9月羽化個体に分けて分析した結果、雌雄とも、9月ではサイズに依存して交尾頻度が高くなった。 これらの結果から、オンブバッタでは、発生前半(8月)では大きい個体が出現する傾向にあるため、体サイズと交尾頻度の関係が不明瞭であるが、後半(9月)では全体に小型の個体が出現するため、体サイズに依存した交尾頻度の変化、すなわち配偶者選択がある可能性が示唆された。なお、オンブバッタの交尾行動は雄が能動的で、雌は受動的であるので、これは雄による雌の選択と考えるのが妥当と思われた。
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