1998 Fiscal Year Annual Research Report
多回交尾システムをもつ直翅目昆虫における精子競争の適応的意義
Project/Area Number |
09640758
|
Research Institution | KINJO GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小野 知洋 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (50125192)
|
Keywords | 直翅目昆虫 / Atractomorpha lata / Truljalia hibinonis / 体サイズ / 日齢 / 求愛給餌 / 配偶者選択 |
Research Abstract |
多回交尾を行う直翅目昆虫において、いかに配偶者選択が行われているのか、またとりわけ雌においては多回交尾からいかなる利益を得ているのか、という点を明らかにする目的で2種の昆虫に関して検討を行った。 まず、多回交尾を行うオンブバッタに関しては、前年に引き続いて交尾活動に対する日齢の影響を調べた。その結果、雌雄ともに日齢の進行にともなって交尾活動が活発になり、観察開始時の雌雄各個体の日齢と交尾またはマウントが観察された頻度の間には有意な相関がみられた。しかし、実験的に日齢構成を「老:中:若」の3段階で組み合せた雌雄を同居させて観察した場合にも、特定の組み合せの間で特に交尾活動が多い等の傾向はなかった。 一方、アオマツムシについては、雄が交尾時に雌に提示し、雌が交尾中に摂食するMetanotal Secretion(MS)が、多回交尾システムの中で、雌の卵生産にどのような効果を及ぼすかを調べた。その結果、MSの摂食が雌の卵生産にマイナスの効果があるという興味深い結果が得られた。すなわち、人為的に複数回MSを摂食した個体は、30日齢において総卵数が有意に少なく、特に卵巣内に残存する卵数が少なかった。また、MSの摂食量と卵巣内残存卵数の関係を調べると有意な負の相関を示した。過去に多くの昆虫種で、本種と類似の求愛給餌行動が報告されているが、求愛給餌がそれを摂食した個体にマイナスの効果を及ぼすとの報告はこれまでになく、きわめて興味ある事実である。今後、本種の繁殖システムのなかでこの現象がどのような生物学的な意義をもっているのかの検討が必要である。
|