1998 Fiscal Year Annual Research Report
チラコイド膜を構成する主要糖脂質の生合成機構とその葉緑体形成における役割
Project/Area Number |
09640765
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 啓之 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (20233140)
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Keywords | チラコイド膜 / 葉緑体 / 糖脂質 / モノガラクトシルジアシルグリセロール / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
葉緑体のチラコイド膜に含まれる脂質のうちの50%近くはmonogalactosyl-diacylglycerol(MGDG)と呼ばれる葉緑体に特徴的な糖脂質である。MGDGは、葉緑体の包膜でMGDG合成酵素と呼ばれる糖転移酵素によりdiacylglycerolとUDP-galactoseを基質としで生合成される。本研究では、チラコイド膜の構築のメカニズムを、これまで研究が全くなされていなかった膜脂質構築の観点から新たに解析し、1.チラコイド膜構築時におけるMGDG合成酵素の制御メカニズムの解明、2.チラコイド膜糖脂質が果たす生理的役割の解明、の2点を主な目的として研究を行った。 結果 1. シロイヌナズナおよびタバコから単離したMGDG合成酵素遺伝子をセンスおよびアンチセンスの向きでアグロバクテリウムのバイナリーベクター中のT-DNA(転移DNA)領域に組み込み、形質転換に用いるためのベクターを作製した。MGDG合成酵素遺伝子を組み込んだアグロバクテリウム調製し、減圧浸潤法あるいはリーフディスク法により、成熟個体に導入した。この操作を行った個体を、22゚Cで2〜3週間栽培し、収穫した種を抗生物質を含む培地中で選抜した。得られた抗生物質耐性の形質転換体の中から目的遺伝子の導入の起こったものをPCRを用いて確認した。以上の実験から、チラコイド膜糖脂質が果たす生理的役割の解明に向けての、形質転換体の作製に成功したと考えている。 2. シロイヌナズナに、2種の異なるMGDG合成酵素が存在することを明らかにし(MGDA、MGDB)、それぞれのcDNA、ゲノム遺伝子を単離した。また、2つの遺伝子の発現が大きく異なることをCompetitive RT-PCRの手法を用いて明らかにした。この結果から、MGDAはプラスチド、特に葉緑体の形成過程にMGDGの合成を主要に担う遺伝子であることが明らかになったが、MGDBは、花芽特異的に発現していることが分かった。これは、MGDGの主要な存在部位が葉緑体チラコイド膜であることと相反しており遺伝子の機能を考える上で興味深い。
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