1998 Fiscal Year Annual Research Report
網膜神経組織の形成過程におけるニューロンの光応答発現とシナプス形成に関する研究
Project/Area Number |
09640801
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 親文 筑波大学, 生物科学系, 講師 (80272152)
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Keywords | イモリ / 網膜 / 再生 / 伝達物質 / 受容体 / シナプス / ギャップ結合 / 前駆細胞 |
Research Abstract |
イモリの網膜は完全に除去されても再生することができる。再生の過程で、網膜を構成する神経細胞が分化し、互いにシナプスを形成することで複雑な光情報処理能力を回復する。本研究はこうした網膜再生系を用いて、神経細胞間のシナプス形成と光応答発現のプロセスについて明らかにすることを目的とする。 今年度、正常網膜のスライス-パッチクランプ法により、アマクリン細胞の光応答を解析した結果、多くの細胞が興奮性と抑制性のシナプス入力を受けることが分かった。 また、少なくとも抑制性成分の多くはグリシン受容体を介していることが分かった。さらに、伝達物質受容体の解析により、全てのアマクリン細胞がAMPA型とNMDA型のグルタミン酸受容体、A型のGABA受容体、一般的なグリシン受容体を発現していることが分かった。また、それら受容体の発現量が細胞のタイプによって異なることが分かった。 再生過程の異なる段階の網膜をスライスし、同様の手法で細胞のイオンチャネルや受容体の発現様式について解析を始めた。その結果、再生網膜がまだ1〜2層の段階では、網膜を構成する細胞(網膜前駆細胞)はギャップ結合を介して互いに連絡していることが分かった。また、細胞の興奮性に関わる電位依存性Na電流は示さないことが分かった。Na電流は、網膜がさらに厚みを増した頃、硝子体側に出現する細胞体から初めて検出された。これらの細胞は神経節細胞あるいはアマクリン細胞であると考えられる。来年度以降、アマクリン細胞に加え、他の神経細胞(視細胞、水平細胞、双極細胞、神経節細胞)の光応答や伝達物質受容体の解析を進めると同時に、再生過程におけるそれらの発現様式について調べる予定である。また、隣接する細胞どうしを電気刺激することにより、機能的なシナプスの形成過程についても調べる予定である。さらに、視細胞の光応答発現時期を明らかにし、網膜細胞のシナプス形成と光応答発現時期との相関ついて調べる予定である。
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