1997 Fiscal Year Annual Research Report
電位依存性K^+チャネルにおける不活性化機構に関する研究
Project/Area Number |
09640810
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
古川 康雄 広島大学, 理学部, 助教授 (40209169)
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Keywords | イオンチャネル / 不活性化 / 分子機構 |
Research Abstract |
本研究の目的は、電位依存性K^+チャネルにおける不活性化の分子機構を明らかにする事である。この目的のために、アメフラシからクローニングされたK^+チャネルのうち、顕著な不活性化を示すaKv1.1aと全く不活性化を示さないaKv5.1を選び、アフリカツメガエル卵をチャネルの発現系として不活性化過程を解析した。また、aKv1.1aと一次構造上の相同性が高いラットのK^+チャネルであるrKv1.4の性質をaKv1.1aと比較したところ、不活性化機構に違いがみられたので、その分子機構の解析を平行して行った。 1.aKv1.1aのN型不活性化におけるチャネル閉塞に必須のN末端部位を特定するために、N末端の一次構造にもとづく合成ペプチドを作製し、aKv1.1aのN末端欠失変異異体チャネルに対する作用をinside-outパッチクランプ法で解析した。その結果、N末端の20残基までのアミノ酸が必須ではない可能性を示唆する結果を得たが、チャネル閉塞に必須の部位は明らかにできておらず、この方向での実験を現在継続中である。 2.aKv1.1aとaKv5.1はどちらも6つの膜貫通ドメインを持っており、基本的な構造は類似している。そこで両チャネルのキメラを作成して機能解析を行うことにより、不活性化に必須のドメインを絞れるはずである。そこで16種類のキメラチャネルを設計し、現在その一部の作製を終えた段階である。 3.aKv1.1aとrKv1.4は、どちらも不活性化からの回復が遅く、蓄積的不活性化と呼ばれる現象を示す。両チャネルの蓄積的不活性化をinside-outパッチクランプ法で調べたところ、aKv1.1aの蓄積的不活性化はこの実験条件下で増強されたが、rKv1.4のそれは逆に抑制された(第68回日本動物学会)。蓄積的不活性化にはチャネルのポア領域の機構が関与すると考えられるので(Furukawa & Takahashi,1997)、両チャネルのポア領域におけるアミノ酸配列を比較し、aKv1.1aにおけるアミノ酸をrKv1.4の相同部位のアミノ酸に置換した点変異体を作製した。現在までに、378番目のアラニンや379番目のアスパラギン酸をrKv1.4型のアミノ酸に置換すると、inside-outパッチにおける蓄積的不活性化の増強が消失する事や、406番目のアルギニンをrKv1.4型に換えると、不活性化からの回復が数十倍も遅くなる事が明らかになった(第75回日本生理学会大会)。現在、これら点変異体において、さらに詳細な機能解析を進めているところである。
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