1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640823
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平野 義明 千葉大学, 理学部, 助手 (00144808)
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Keywords | ミノウミウシ / 変異 / DNA / 交尾器 / 新種 |
Research Abstract |
生息場所によって2型が見られる種について、ミトコンドリアDNA・COI領域下流部の塩基配列(243塩基対)を決定する遺伝子解析をおこなった。その結果、9種類の異なるハプロタイプが得られ、これらについて2集団間のハプロタイプ組成の差の有意性をRaff&Betzen(1989)の方法で検定したところ、有意な差がないことがわかった。また、集団に特有のパターンも見られなかった。これらの結果より、2つの集団は同じ種より構成されていることが明らかになった。分散力の高いプランクトン栄養型の小さい幼生を出すこの種では、各世代が新たに別々のサイトに定着し、餌の質と現存量の違いによって成長パターンに差が生じるものと推定された。 別の研究では、色彩タイプの間には雄性生殖器の中を貫通する輸精管の到達位置に生じた変化とペニスそのもののかたちの変化が同時に現われており、交尾の様式や時間といった点にまで大きな差を生じていることを明らかにした。つまり、変異ではなく明らかに独立した2種の存在を証明し、1新種の発見にも結びついた。しかし、生殖器以外の内部形態にはまったく変化が生じておらず、また著しい機能的違いを見せる生殖器の違いも、じつはごくわずかな作りのプランを変更するだけで成立可能であることが示された。このことは、生殖隔離によって種形成が行われても、顕著な外部形態の差を生み出さない例があることを示している。両種は餌を含む種々のニッチ要求もほとんど違わないため、実際に互いに出会う確率は相当に高いものと考えられる。それでも生殖前隔離を暗示させるような形質の決定的な違いが現われないのはなぜであろうか。さらなる問題が提示された。
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Research Products
(1 results)