1998 Fiscal Year Annual Research Report
スゲ属ホンモンジスゲ類における異数性と遺伝的分化の解析
Project/Area Number |
09640830
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
星野 卓二 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (10122392)
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Keywords | スゲ属植物 / ホンモンジスゲ類 / 分類学的再検討 |
Research Abstract |
本年度はOhwi、AkiyamaおよびLeveille and Vaniotにより記載されたタイプ標本を参考にして、日本各地のホンモンジスゲ類の分類学的再検討を行なった。その結果、イトスゲ、アリマイトスゲ、オオイトスゲの3種に関して次のような新知見が得られた。 イトスゲは、Leveilleand Vaniot(1901)により茨城県をタイプロカリティとして記載されており、タイプ標本(Faurie 4431,P)の葉幅は1.0〜1.5mmである。中部地方以東に生育する個体で葉幅が1.0〜1.5mmのものはタイプと同じ形態を持つものである。しかし、近畿地方以西に分布する葉幅が0.5mm以下の個体は、葉はすべて内巻きしている。葉幅が0.5mm以下で葉は内巻きしないハコネイトスゲとも明確に区別でき、これまでイトスゲと同定されてきた近畿地方以西に分布する植物は新分類群であることが明らかになった。岡山県後月郡芳井町産の個体は、匍葡枝、小穂、葉鞘などの形態がアリマイトスゲと同一であったが、果嚢に毛が多いことや嘴が長いことで異なり新分類群であると考えられる。また、小山(1964)と大井(1983)が記載したオオイトスゲは、植物体の大きさと基部葉鞘の色の違いで北海道に分布するオオイトスゲと本州に分布するシロイトスゲの2分類群に区別でき、秋山(1955)の見解を支持する結果が得られた。 以上の結果をもとにホンモンジスゲ類の検索表の作成を試みたところ新たに作成した検索表は、大井(1983)に近いものとなった。秋山、小山、大井は色の形質に重点をおいて分類しているが、各分類群で色の変異が大きく、果胞の毛の有無を重視することで検索しやすいことがわかった。
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[Publications] 星野卓二: "走査型電子顕微鏡を用いたカヤツリグサ科植物の痩果表面構造の解析と系統分類への応用" 生物学に関する試験研究論業. 13. 1-7 (1998)
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[Publications] 星野卓二: "高感度冷却CCDカメラを用いた染色体の観察" 岡山理科大学総合機器センターだより. 5. 5-6 (1999)
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[Publications] Shrestha R.: "Karyomorphological studies in Girardinia diversifolia (Link) Friss.(Urticaceae) collected from Napal." Journal of Japanese Botany. 73:3. 125-127 (1998)
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[Publications] Ohira S.: "Sesquiterpenoids from Cyperus rotundus." Phytochemistry. 47:8. 1577-1581 (1998)