1998 Fiscal Year Annual Research Report
多孔質シリコンにおける添加エルビウムの発光励起機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
09650021
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Research Institution | TOYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森川 滝太郎 東洋大学, 工学部, 教授 (80191013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小室 修二 東洋大学, 工学部, 助教授 (90120336)
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Keywords | 多孔質シリコン / エルビウム添加 / 光励起発光 |
Research Abstract |
エルビウム添加多孔質シリコンから得られる波長1.54μmの光励起発光(フォトルミネセンス)に関し、励起光のエネルギーがエルビウムに伝達される過程を解明する研究の第2年度として、試料の各種分光測定、および励起機構モデルの構築を次のように実施した。 1. パルスレーザー光励起による時間分解発光分光を行い、可視域と赤外域の発光応答の時間的差異を調べた。その結果、励起光によって多孔質シリコン中に生成された電子・正孔対とエルビウムイオンとの間のクーロン相互作用に起因する仮想準位の存在を想定することの必要性が明らかとなった。なお、励起光源として用いた高調波発生YAGレーザーの電源には設備備品として利学研究費補助金によって購入したものを使用した。 2. X線吸収微細構造分光によって試料の光学活性化に係わる局所構造を調べた。その結果、エルビウムと酸素が近づいた非対称六配位構造が発光の要因であることが見出された。 3. 電界印加によって電子・正孔対の解離に起因する消光過程を調べた。その結果、電界が臨界値を越えると発光が急速に減少する現象が見出された。 4. 母体の影響を比較検討するために、レーザーアブレーションで作成したエルビウム添加微結晶シリコンの光励起発光分光を行った。その結果、その発光過程は多孔質シリコンの場合に類似していることが明らかとなった。 これらの諸結果を踏まえて、励起エネルギーの移動に関する数式モデルを解析し、第1年度に想定した発光機構の妥当性を総合的に評価した。その結果、波長1.54μmのエルビウムからの発光は、母体である多孔質シリコンで生成された電子・正孔対からエルビウムへのエネルギー移動のプロセスを介して、すなわち直接励起ではなく間接励起によって得られる、という結論に達することができた。
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[Publications] S.Komuro: "Time response of 1.54μm emission from highly Er-doped nanocrystalline Si thin film prepared by laser ablation" Appl.Phys.Lett.74・3. 377-379 (1999)
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[Publications] M.Ishii: "The optically active center and its activation process in Er-doped Si thin film produced by laser ablation" J.Appl.Phys.to be published. (1999)