1998 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解反射分光を用いた吸着・脱離の動的過程の研究
Project/Area Number |
09650027
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田中 正俊 横浜国立大学, 工学部, 教授 (90130400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織田 晃祐 横浜国立大学, 工学部, 助手 (90282954)
中島 俊信 横浜国立大学, 工学部, 助手 (30017991)
宇佐美 誠二 神奈川工科大学, 教授 (40017877)
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Keywords | 実時間測定 / 反射分光 / マルチチャンネル測定 / 化学吸着 / シリコン / 塩素 |
Research Abstract |
平成9年度に作成したマルチチャンネル光反射分光測定装置を用いて、今年度はSi(111)の塩素吸着・脱離現象の実時間測定を行い、その中間過程を研究した。 (1) 室温における清浄表面への吸着の研究では以下の点が明らかになった。 1) アドアトムのダングリングボンドへの吸着(≡SiClの形成)は露出量約2Lで飽和し、その後アドアトムのバックボンドの切断(=SiCl_2、SiCl_3の形成)が進行する。実時間測定からこれらの過程の確率が決定された。 2) ホール密度1×10^<15>cm^<-3>と9×10^<17>cm^<-3>の試料では、後者の方がバックボンドの切断が速いという結果が得られた。これは多数のホールによってSi間の化学結合が弱められることで説明された。 3) 1)のような清浄表面の化学結合の変化は水素吸着によっても観測されているが、この他に3.6eV付近に塩素吸着特有の構造が見いだされた。バンド計算、UPS、EELSとの比較から、この構造はSiのバルク状態から≡SiClの反結合状態への遷移に対応すると推定された。 (2) 室温で飽和吸着させた後740Kで熱処理して≡SiClで覆われたレストアトム表面を形成させた。この表面からの880-940KにおけるSiCl_2の脱離の研究では以下の点が明らかになった。 1) ごく初期にダングリングボンドの回復が見られる。 2) 支配的な過程はバックボンドの回復である。この脱離定数の温度依存性から活性化エネルギー2.7eVが得られた。 以上のように、スペクトルの構造エネルギーから化学結合を特定して吸着・脱離現象を実時間観測し、その過程を解析できることが示された。
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