1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09650030
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小出 康夫 京都大学, 工学研究科, 助教授 (70195650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 正紀 京都大学, 工学研究科, 教授 (70229970)
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Keywords | ダイヤモンド / 電界電子放出 / 気相成長 / 電気伝導 / 表面損傷 / スパッタリング / 安定性 / ダイヤモンド状カーボン |
Research Abstract |
FED(Field Emission Display)は、次世代フラットパネル・ディスプレイとして注目されている。FEDの性能を十分に引き出す為には、電子放出材料の高性能化が必要不可欠である。高性能化には、(1)低駆動電界,(2)高電子放出能,及び(3)高信頼性の3条件すべてを満たすことが求められる。本研究では、実用化が期待される電子放出材料として気相成長ダイヤモンド薄膜に注目した。本研究の目的は、ダイヤモンド薄膜を低抵抗化し、上述した3条件を満足させる高性能なダイヤモンド系電界電子放出材料を開発する事である。気相成長ダイヤモンド薄膜中のグラファイト成分量を増加させる事によって、作製したdiamond-like carbon(DLC)薄膜ではダイヤモンド薄膜に比べて膜抵抗は2桁以上低下した。このDLC薄膜を電界電子放出材料として用いることで、(1)駆動電界においては、約10V/μmもの低駆動電界を達成した。また、(2)電子放出能においては、ダイヤモンド薄膜に比べ10万倍もの大きな電子放出電流を観測した。しかし(3)信頼性においては、電界電子放出測定後にクレーター生成を伴う表面損傷が起こった。多くの研究者が同様の表面損傷を報告しているが、その原因と防止法は特定できていない。しかしながら本研究により、真空ギャップに印加される電界Evacuumの上昇が表面損傷の原因であり、表面損傷が発生する閾値電界は約80V/μmである事が分かった。また従来の報告のように、表面損傷に伴い電界電子放出が起こるのではない事も示せた。表面損傷を抑制するためには、Evacuumを80V/μmよりも低い値に抑える事が必要となるが、この電界値以下においてFEDに必要な電子放出電流を十分に得ることが可能であった。以上より、DLC薄膜を電界電子放出材料として用いることで、電子放出材料に求められる性能3条件すべてを達成し、FEDへの実用化が望めることが判明した。最大の成果は、表面損傷の原因と防止法を発見した事である。
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