1997 Fiscal Year Annual Research Report
微弱な核励起現象の観測のための内部転換電子時間分光法の開発
Project/Area Number |
09650073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岸本 俊二 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所・物質科学第2研究系, 助教授 (00195231)
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Keywords | 核励起 / 放射光X線 / 電子分光器 / アバランシェ・フォトダイオード / 内部転換電子線 / 時間分光法 |
Research Abstract |
X線入射によって核外電子を電離し、その後の脱励起過程で必要な条件が満たされる場合は小さな確率で原子核が励起される。これは軌道電子遷移による核励起現象(NEET)と呼ばれる。本研究の目的は、(1)その原子核から放出される内部転換電子線を強大な電子散乱線から電子分光器によって分離し、アバランシェ・フォトダイオード(APD)検出器を用いてサブナノ秒時間分解能で時間スペクトル測定を行う装置を開発すること、 (2)この装置によってS^<197>AuのNEET確率を正確に求める手法を開発すること、である。 このため今年度は、APDを組み込んだ電子分光装置の製作を行った。当初の計画では、同心球型静電分光器を考えていたが、電子線を取り込む立体角を十分に大きくするのは困難と判明したため、円筒鏡型静電分光器を設計、製作した。この分光器は、試料部を分光器に内筒に収める構造がとれるので、分光する電子線の立体角の選択が比較的自由である。内筒半径12.5mm、外筒半径24mm、散乱X線や光電子の影響を減らすために放射光の偏光特性を考えて偏光面上でX線入射方向から90度の方向に放出される電子線を中心に±約3度の範囲で分光を行う構造とした。相対論を考慮した軌道計算により印可電圧を選ぶことでAu-L殻内部転換電子線(E=63.0,63.6,65.4keV)について±0.6mmで軸上に収束して検出できることがわかった。その位置に直径3mm、空乏層厚30μmのAPDを置き電子線を検出する。高エネルギー加速器研究機構・放射光研究施設の垂直ウィグラービームラインBL14AにてAPDの電子線検出特性および電子分光装置の性能評価を行う予定だったが、分光器製作が遅れたため分光器の性能評価については実施に至っていない。平成10年度に実施する。APDの特性については論文投稿(Nuclear Instruments & Methods)の準備中である。
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