1997 Fiscal Year Annual Research Report
伸線強化組織を持つ共析鋼極細線の疲労強度と破壊機構
Project/Area Number |
09650086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
片桐 一宗 岩手大学, 工学部, 教授 (90029893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠場 孝一 岩手大学, 工学部, 助手 (00271841)
佐藤 正 岩手大学, 工学部, 助教授 (30003859)
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Keywords | 疲労強度 / 共析鋼 / 極細線材 / 伸線ひずみ / 疲労き裂進展抵抗 / 線径 / ラメラ間隔 / 硬さ |
Research Abstract |
耐疲労特性を兼ね備えた高強度共析鋼の開発指針を得ることを目的として、伸線加工ひずみが4を越える領域に至る強加工した共析鋼極細線の疲労強度に及ぼす諸因子の影響を明らかにするため、熱処理と伸線加工を数回繰り返して得た系統的に異なる因子を持つ試料について疲労試験、硬さ測定や微視的観察を行い得られた結果は以下のとおりである。 1.疲労限度および時間強度は伸線加工ひずみの増加とともに上昇するが、加工ひずみ2.5を越えると低下する。これはひずみの増加に伴う内部組織の強化と表面の引張残留応力の増加によって説明される。フェライト鋼ではそれらの増加の程度は小さいが、ひずみとともに単調に増加する。同一伸線加工ひずみの線材の疲労強度は線径の減少(0.2〜0.4mm)とともに上昇するが、パ-ライトラメラ間隔(0.01〜0.02μm)には依存しない。 2.共析鋼の硬さは伸線加工ひずみの増加に伴って大きくなる。疲労に伴って若干の硬さの増加が認められ、その程度は加工ひずみの大きなものの方が大きい。 3.下限界応力拡大係数幅はパ-ライトコロニー寸法およびラメラ間隔の減少、したがって伸線加工ひずみの増加とともに低下する。また、加工ひずみの増加とともにパリス域のき裂進展抵抗は上昇し、ここでのき裂進展特性の勾配を示すm値は減少する。 4.き裂はパ-ライト中のフェライト層に沿って、あるいは介在物を起点として発生・進展するが、パ-ライトコロニー境界で大きく方向を変え、線材長手方向に沿うき裂の進展も認められる。疲労寿命に占めるき裂発生、初期進展期間の割合は伸線加工によって増加する。 5.加工ひずみの大きな板材のき裂先端近傍のフェライト層の中には非常に高密度の転位が密に絡み合っていることが観察され、ラメラ-間およびその内部でも大きな結晶方位の差が観察される。
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