1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09650169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 修一 日本工業大学, 工学部, 助教授 (60220886)
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Keywords | 立方晶室化ホウ素 / 薄膜 / イオンプレーティング / イオン注入 / トライボロジー / 積層膜 / 保護膜 / 被覆工具 |
Research Abstract |
立方晶室化ホウ素(c-BN)はダイヤモンドに次ぐ高硬度を有し、化学的安定性にも優れるという特性を持つことから現在注目を集め、広い分野への応用が期待されている。筆者らはこのc-BNを独自に開発した磁界励起形イオンプレーティングによって広い応用が期待される膜として合成に成功した。本研究の目的はc-BN膜の実用化を計る開発研究を行うことである。 申請研究初年度に当たる本年度は、まず膜の実用化を計る上で重要となる付着性の向上を行うために施したイオン注入後処理の効果について検討した。その結果、適切な処理条件を選択すれば、例えばスクラッチ試験による付着性評価によると、約4倍程度の向上が認められ、いくつかの摩擦摩耗試験に於いても優れた性能(摩擦係数低減化、摩擦耐久性の向上等)を示すことが確認された。そこで、磁気ディスクの保護膜としての利用を想定したマイクロトライボロジー性能を調査した。その結果、イオン注入により微少な荷重領域で摩擦係数は低くなるもののマイクロスクラッチ耐久性は劣化することが認められた。実用的な研究の第一歩としてイオン注入により膜の耐久性を向上させた膜を被覆した加工工具を試作して実機評価を行った。その結果、c-BN膜の持つ高硬度および低摩擦特性はc-BN膜被覆工具における耐摩耗性を含む切削性能の向上に寄与することを明らかにした。これらと並行して、c-BN膜の耐久性向上を目的とするc-BN/TiN積層膜の開発に関する研究も行った。具体的には、膜の耐摩耗性の改善のためc-BN/TiN積層化により厚膜化をはかることである。形成した積層膜の全膜厚は実測したところ約1.2um程度(各層(TiNとc-BNそれぞれ)の厚さはほぼ均一である)となり、c-BN膜単層の最大形成可能膜厚(0.5um)より厚く健全な膜を形成することができた。
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[Publications] 神雅彦、渡部修一他: "c-BN膜の耐摩耗性" 1997年度精密工業会春季大会学術講演会講演論文集. 319-320 (1997)
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[Publications] 渡部修一他: "各種摩擦環境におけるc-BN膜の耐久性" 第11回ダイヤモンドシンポジウム講演予稿集. 100-101 (1997)
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[Publications] 渡部修一他: "イオン注入した立方晶室化ホウ素膜の膜構造" 日本化学会第73回秋季年会講演予稿集. 125 (1997)
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[Publications] S.Watanabe et al.: "Tribological performance of cubic BN films" Diamond Films and Technology. 7・2. 139-156 (1997)
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[Publications] 渡部修一他: "イオン注入したc-BN膜のマイクロトライボロジー" トライボロジー会議平成10年春 東京. (発表予定).
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[Publications] 三宅正次郎、渡部修一他: "立方晶室化ホウ素膜の水による境界潤滑特性" トライボロジー会議平成10年春 東京. (発表予定).