Research Abstract |
バイオ産業に用いられている培養法の中でも重要な固体培養,特に,生産規模の大きなきのこの菌床培養において,培養の管理に資するために,非破壊計測法の一つである近赤外分析法を用いて,培養中の微生物の増殖などの情報を得る技法を開発し,培養の効率化,安定化,高生産性化をめざした。漢方薬として利用されている霊芝(Ganoderma lucidum)を,実生産規模と同じ大きさの培養袋を用い,照明付植物インキュベータ(本年度購入備品)内にて培養し,近赤外分析法に供する試料を得た。近赤外分析法では,試料の温度,粒度,水分量の影響を大きく受ける。安定した試料を得るために菌床を乾燥,粉砕を試みた。試料をサンプルカップに均等になるように充填した後,400-2500nmの範囲の反射光近赤外スペクトルを計測した。得られた原スペクトルをさらに1次微分,2次微分し,それぞれ1次微分スペクトル,2次微分スペクトルを得た。原スペクトルでは,培養が発展するにつれベースラインのシフトが観察されたが,スペクトルの微分処理を行なうことにより,ベースラインのシフトの影響を少なくすることが可能であった。微生物の膜構成成分であるグルコサミンに着目し,従来分析法を試み,微生物の増殖を表わす指標成分となりうるかについて検討した。非常に煩雑な分析工程であるが,増殖を表わす指標になりうることが明らかになった。さらに,近赤外スペクトルにおいて,微生物の増殖由来の吸収がみられる波長の選択について検討し,有効な数波長を選択し,波長の帰属について検討中である。また,非常に煩雑な分析工程である従来分析法に替わり,近赤外分析法は数分の所要時間で微生物の増殖を表わす指標成分と相関の高い成分が測定可能であり,きのこの菌床培養における培養管理に大いに役立つことが示唆された。今後,非破壊かつ安定した測定法の確立と,実用化に耐えうるシステム構築を行なう。
|