Research Abstract |
近年,各分野においては環境保全が重要視されている。建築や土木における環境保全の方法としては,(a)資源の有効な活用,(b)各種副生材の有効な活用,(c)実施したものの長寿命化,などが挙げられる。しかしながら,今まで(c)の観点から基礎的な研究は少なく,長期の耐久性を有するコンクリートの開発が強く要望されていると考えられる。そこで本研究では,コンクリートの耐久性の評価モデルを用い,環境保全におけるコンクリートの活用方策としてコンクリートの長寿命化を検討するものである。コンクリートの耐久性の評価モデルに関してはコンクリート中の物質移動によりアプローチするモデルを考えた。そのため,粗骨材の混入量及び種類に着目し,物質の移動経路のモデル化を検討し,コンクリート中の物質移動のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 コンクリートの水セメント比を同一としたときに骨材の混入量が異なってもペースト部分の単位体積当たりの細孔量がほぼ同じであり,結合水量の測定結果及びX線回折測定結果も同様な傾向に得られており,水和反応速度及び水和生成物の種類がほとんど変わらないことが明らかとなった。また,細孔径分布の結果によると,骨材の混入量及び種類により細孔径分布が相違する。これは,骨材とセメントペーストの間にポーラスな領域(遷移帯)が存在するためと考えられ,骨材の混入量によって遷移帯を含む50nm以上の細孔量と50nm以下の細孔量が大きく変化する。骨材の混入量が0.55程度までは50nm以上の細孔量が大きくなるが,その以上は50nm以上の細孔量が少なくなる。さらに,同一骨材の混入量のときに骨材の径が小さいほど50nm以上の細孔量も少なくなる。従って,骨材と骨材の間が狭くなると,水がほとんどセメント水和反応のために使用されるため,骨材の界面に集まる水が少なくなり,骨材とセメントの間にポーラスな領域(遷移帯)も少なくなることが分かった。また,同一寸法のときに骨材の形状の影響はほとんど認められなかった。 コンクリートの細孔構造の結果より,物質の移動経路であるコンクリートを直線的な経路と考え,セメントペースト,遷移帯及び骨材の3部分に区別し,新たに「効果断面積」を考慮した物質の移動経路のモデルを提案することを試みた。その結果は,電気的手法応用した実験方法(ここでは,導電率)はイオンの移動が関係していると思われ,上記モデルをコンクリート中のイオン移動に関連した導電率に適用するほぼ満足した。さらに,コンクリート中の細孔構造を基にしたコンクリートの導電率を予測することが可能であることを示した。
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