Research Abstract |
太陽放射の紫外線(UV:U1traviolet)は波長400nmから100nm以下で,便宜上,可視域に近い方からUV-A(400-320nm),UV-B(320-280nm),UV-C(280nm以下)に分けられる。近年,紫外線,とりわけオゾン層破壊によるUV-Bの増加が人の健康や生態系に及ぼす影響について関心が高い。しかし,紫外線環境という概念については確立していないため,広い学問領域にわたっている紫外線の人の健康におよぼす影響についての基礎的な資料を収集し整理した。 紫外線は私たちの健康に非常に有害である。UV-Bは,日焼け(シミ・ソバカス),皮膚ガンを引き起こす。また,世界的に社会問題となっている加齢性白内障は,眼のレンズの役割をしている水晶体が白濁し,光の世界を失うものであるが,我が国でも50歳代前半で25%,50歳代後半で41%,60歳代73%,70歳代90%(75歳以上では100%)という数値がある。この加齢性白内障が,UV-Aにより引き起こされているということは,眼科領域でほぼ通説となっている。さらに,紫外線のみならず紫外域に近い可視域・青領域の光も,網膜の光を感じる細胞である視細胞に,青色光障害とよばれる網膜障害を引き起こす。 植物葉は,この紫外線の全波長域についてほぼ95%を吸収している。紫外域の反射は,5%前後の低い値である。また,植物葉の紫外域透過は,ほとんど完全にゼロである。この特性は,春の新葉,夏の成葉,秋季の黄葉,冬季の枯葉といった葉齢によっても変化が無い。また,植物葉分光特性は,可視・青領域においても吸収域である。 紫外線および可視・青領域の私たちの健康におよぼす有害性から,都市緑化については,装飾(あるいはファッション)としてではなく,それらの緩和の機能が十分働くような設計と管理が重要である。そのような都市の設計は,同時に熱環境の緩和,大気の浄化,景観などの複合的な機能も期待できるであろう。
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