1997 Fiscal Year Annual Research Report
多孔質材料の凍結・融解による劣化機構の解明とその防止対策
Project/Area Number |
09650615
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
石崎 武志 東京国立文化財研究所, 保存科学部・物理研究室, 室長 (80212877)
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Keywords | 石造文化財 / 凍結劣化 / 水晶析出 / 大谷石 / レンガ |
Research Abstract |
本年度は、石造文化財である宇都宮の長岡の百穴の凍結劣化状況、重要文化財に指定されている旧旭川偕行社の煙突のレンガの凍結劣化状況の調査を行った。これらの多孔質材料が冬期の凍結融解の繰り返しにより激しく劣化することがわかった。旧旭川偕行社の煙突では、目地の部分がレンガ部分より劣化が大きいことが観察された。これは目地部分のセメントモルタルの方が保水性が高く、細かい間隙を多く含み凍上性が強い多孔質材料であるためと考えられる。 室内実験に関しては、一定の温度勾配下、一定の凍結速度で試料を凍結させる装置を作成し、試料中の氷晶析出状況を顕微鏡でその場観察し、ビデオに記録した。実験試料として、2.2、5.3、7.9μmの粒径のガラスビーズ、凍上性の強い藤の森粘土、大谷石を用いた。実験において、氷晶析出速度は、ビデオ画像を画像処理することによって求めた。実験結果として、ガラスビーズ、藤の森粘土を用いた実験で氷晶析出速度は氷晶析出面の温度に大きく依存し、温度が低いほど大きくなることがわかった。また、大谷石を用いた実験では、氷晶析出が、-1.3℃以下の温度で生じることがわかった。この温度は、熱力学的に計算した破壊に必要な凍上圧を生ずる氷晶析出温度と対応している。これらの結果から、大谷石などの多孔質材料の凍結劣化の主要因は、凍上現象であることがわかった。今後は、材質による、凍結劣化状況の違い、材料別の対策手法について検討していく予定である。
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