1998 Fiscal Year Annual Research Report
高断熱・高気密住宅での火災時のバックドラフト現象の把握と発生モデルの開発
Project/Area Number |
09650643
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
早坂 洋史 北海道大学, 大学院工学研究科, 助教授 (40142195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 好弘 札幌市消防局, 消防科学研究所, 主任研究員
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Keywords | バックドラフト / 爆燃 / 付着火炎 / くん焼 / 自己消炎 / ゴースティング火炎 / フラッシュオーバー / ウレタンフォーム |
Research Abstract |
平成10年度は、バックドラフト発生のメカニズムを明確にするための小型電気炉による木材の基礎的な燃焼実験と断熱材絡みの火災事例の調査を行った。この結果、電気炉の実験結果と1次元熱伝導、熱分解モデルによるシミュレーションの結果から、木材での表面着火後、くん焼による熱分解層が木材内部へ進行し、この熱分解層が木材の裏面に達した時、木材内部の熱分解層の大きさが最も発達することがわかった。この現象は、フラッシュオーバーやバックドラフトの発生と密接な関連があると考えられる。 火災事例の調査は、過去の大きな火災、特に、倉庫火災の被害事例を収集した。その結果、ウレタンフォームの関与した火災事例が多いことがわかった。これにより、断熱材と火災の関連に着目しての調査の結果、グラスウールで断熱化された新築住宅での火災事例があり、フラッシュオーバーとバックドラフトの両方が生じていたことが明らかになった。 バックドラフトのモデル化については、区画内への空気の流入、燃焼ガスの流出、未燃ガスの木材などからの発生と蓄積のような固体の反応など、複雑であるのに加え、バックドラフトに伴う諸現象である、区画内をランダムに動き回る、所謂、ゴースティング火炎、開口部に移動して生じる付着火炎、酸素濃度の低下による、自己消炎、その後のくん焼(スモルダリング)とバックドラフトの発生、ファイアーボールの形成など新現象が種々あり、研究期間内で完成させることができなかった。 しかし、バックドラフト発生のメカニズムは大まかに把握できており、学会の講演などにより、″バックドラフト発生前には、温度が低下するので(酸素濃度は上昇する)、雰囲気的に消火活動が楽になるので注意が必要である!″ことや″窓やドア付近に生じる付着火炎に注意すること!″など、消火活動上、重要な情報を提供できたものと思っている。
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[Publications] 早坂 洋史: "小型区画火災で観測されたバックドラフトとその関連諸現象" 平成10年度日本火災学会研究発表会概要集. 302-305 (1998)
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[Publications] 工藤 祐嗣: "木材の燃焼特性と区画火災での火災現象" 平成10年度日本火災学会研究発表会概要集. 306-309 (1998)
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[Publications] 早坂 洋史: "木材の自然発火と伝熱" 第35回日本伝熱シンポジウム講演論文集. 561-562 (1998)
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[Publications] Hayasaka,H: "Backdraft and Various Backdraft Related Phenomena Observed in Small Compartment Fires" Fourteenth Joint Panel Meeting of the UJNR Panel on Fire Research and Safety. 1-8 (1998)
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[Publications] Hayasaka,H: "BURNING RATE IN A SMALL COMPARTMNT FIRE" Proceedings of the Third Asia-Oceania Symposium. 273-282 (1998)
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[Publications] 早坂 洋史: "小型区画を用いたバックドラフト実験" 日本火災学会論文集. Vol.48-1. 11-17 (1998)
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[Publications] 小島 秀吉: "バックドラフトに関する研究(その3)内部観察ができる区画模型を用いた燃焼再現実験" 防科学研究所所報. 1-18 (1998)
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[Publications] 早坂 洋史: "倉庫火災とバックドラフト" 日本火災学会講演討論会. 15-24 (1998)
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[Publications] 工藤 祐嗣: "バックドラフトとその発生前後の諸現象(その1 バックドラフト発生前の現象)" 日本建築学会大会学術講演梗概要. 231-232 (1998)
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[Publications] 早坂 洋史: "バックドラフトとその発生前後の諸現象(その2 バックドラフトとその後の現象)" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 231-232 (1998)
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[Publications] 工藤 祐嗣: "木材の燃焼特性と予測モデル" 日本機械学会北海道支部第38回講演会講演論文集. 43-44 (1998)