1997 Fiscal Year Annual Research Report
明治期の建築界における様式(style)の概念の移入と摂取に関する研究
Project/Area Number |
09650706
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
川道 麟太郎 関西大学, 工学部, 教授 (80067694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋寺 知子 関西大学, 工学部, 専任講師 (70257905)
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Keywords | 建築様式 / 移入 / 明治 / 国民様式 / ナショナリズム / 概念 / 伊東恵太 / 西洋化 |
Research Abstract |
様式(Style)概念の移入の中心的人物は伊東恵太であった。伊東は明治25年の卒業論文『建築哲学』において、建築を芸術であるとして、それをStyleの概念を用いて規定し、さらにこのStyleを国民嗜好(national taste)を用いて規定した。『建築哲学』の中心テーマは「建築派流論」(派流とは伊東がStyleに当てた訳語)であった。この国民嗜好によって規定される様式の考え方は、明治末の伊東の「建築進化論」や建築界を挙げての「我国の建築様式は如何にあるべきや」の議論につながっていく。こういった建築様式の考え方は、当時1900年前後の西欧の各国での「国民様式」を求める気運に連動するものであった。Styleは明治末期まではその訳語が定まらなかったように、また結局は様と式の合成語として「様式」が当時新たに当てられるようになったように、日本では新しい概念であった。様式概念の西欧からの移入は、他の新たな概念と同様に、西欧での在来の伝統的なものと、時代の最先端の考え方を同時に摂取するものであった。伝統的で基底的なものとの区別が必ずしも定かではなかった。それでも最先端のものへの関心は著しく、西欧での新しい思潮や動向が素早くキャッチされている。明治末期、西欧で新たに発せられた「世界様式(world Style)」の考え方がいち早く採り入れられて議論の対象になっている。この「世界様式」の導入については、必ずしも西欧最新情報というだけではなく、それを受け入れる思想的土壌が明治期の社会に培われていたことを、今年度の別記論文で発表した。今年3月に“英国1907年の「世界様式」説とその位置"を日本建築学会近畿支部に、同4月に“伊東恵太の大正期の建築様式観を巡って"、並びに“明治期の翻訳記事‘建築に於ける材料の勢力'について"を同学会大会に、それぞれ投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)