1998 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス新古典主義期のオーダー表現の理念と実践の比較研究
Project/Area Number |
09650708
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
星 和彦 前橋工科大学, 工学部, 助教授 (70269299)
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Keywords | 英国建築史 / 18世紀 / 新古典主義 / 建築理念 / オーダー / 建築書 / 比例 |
Research Abstract |
作品におけるオーダーの比例的分析については、クリストファー・レンがロンドン・シティに設計した教会堂とセント・ポールズ大聖堂を中心に、その分析を進めた。その結果の概要をつぎに示す。 (1) ルネサンスの建築論からのオーダーの比例の逸脱は、とくに18世紀後半の新古典主義期の特徴と指摘されるが、実作品においては、すでに18世紀に入る以前から、その傾向を示す作品がある。 (2) その場合、円柱の高さは極端に異ならないが、エンタブラチュアについては比例・構成ともにその多様性が注目される。 (3) オーダーのとりわけエンタブラチュアの構成についても、19世紀になりジョン・ソーンが支持したフリーズやコーニスの省略が、すでに1670年代からレンの作品に採り入れられていた。 (4) しかし、表現に類似性があるとしても、その意図は必ずしも同一ではない。レンなどにおける構成の省略や比例の変更は、おもに視覚的な印象効果(例えば、より細長くなど)を求めたためとみらる。他方、アダムなど新古典主義期の建築家では、それに加え理性的な建築思潮の反映も認められる。 (5) レンのセント・ポールズ大聖堂に採用された十数例のオーダーの比例をみると、柱の高さならびに柱高とエンタブラチュアの比はルネサンスの規定に合うが、それ以外ではとくに礎盤や柱台で独自の志向をみせている。 昨年度開始した建築書のオーダーに関する記述のデータ・ベース化とあわせて、オーダーのさまざまな比例に関するデータ・ベース化も作品を中心に進めている(この双方とも添付したシートにもとづく)。今後、イギリスの建築書ならびに同時代のフランスやイタリアの建築書も対象に組み入れていく。
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