1998 Fiscal Year Annual Research Report
明治期の煉瓦造建築の耐震構法ならびに意匠に関する研究
Project/Area Number |
09650709
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Research Institution | SHOWA WOMEN'S UNIVERSITY |
Principal Investigator |
堀内 正昭 昭和女子大学短期大学部, 助教授 (00183103)
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Keywords | エンデ&ベックマン / 法務省庁舎 / ドイツ小屋 / 耐震構法 / 防火床 |
Research Abstract |
本年度は、平成10年度に引き続いて、法務省旧本館の建築技術の復原的考察を行い、とくに、旧本館の創建時(1888〜1895)の床組と小屋組について明らかにした。 まず、床組については、一部を複床とするほかは、約90cmの間隔で梁を配した単床であったが、煉瓦壁には耐震構法である碇聯(ていれん)鉄構法が用いられ、廊下には防火床構法であるヴオールト煉瓦床が採用された。このほかに、煉瓦で被覆した鉄梁、さらに鉄筋コンクリートで補強した梁が用いられた。このように、旧本館は、1890年代以降に普及したとされる耐震ならびに防火床構法をすべて備えた先駆的な建物であった。なお、設計はメートル法を使ってなされた。同研究成果は、日本建築学会計画系論文集に「法務省旧本館の創建時の床構法に関する研究」と題して発表した。 次に、旧本館の小屋組は、ドイツのものに似るが、束を左右から方杖で支えたり、数多くの斜柱で支えている点でドイツに類例のないものである。さらに、旧本館に用いられた部材は、ドイツのものよりも大きかった。そうなった理由は、日本では小屋裏を積極的に使用する必要が無かったことと、日本の耐震技術の発達を促したとされる濃尾地震(1891)を工事中に経験したことで、小屋組の耐震設計が強化されたからだと考えられる。同研究成果は、日本建築学会関東支部研究報告集に「法務省旧本館に用いられたドイツ小屋」と題して発表した。 なお、平成11年度中に、これらの研究成果に基いて「エンデ&ベックマンによる西洋建築構法の日本への移植と変容」、「法務省旧本館の木構造技術に関する研究」を発表する予定である。
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Research Products
(2 results)