1997 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属シリサイドの結晶格子内原子変位と方向性結合
Project/Area Number |
09650716
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 克志 京都大学, 工学研究科, 助手 (30236575)
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Keywords | 遷移金属ダイシリサイド / シリコン原子位置 / 構造解析 / 弾性率 / 方向性結合 |
Research Abstract |
遷移金属シリサイドの中でC11_bおよびC40構造を持つ遷移金属ダイシリサイド中の無応力状態におけるシリコン原子位置を四軸X線回析法により決定した.その結果,シリコン原子は従来報告されていた遷移金属間を3等分する位置に存在するのではなく,互いにわずかに近寄った位置にあることが明らかとなった.また,このような測定に際し,シリコン原子の僅かなずれは回折指数が大きいところで顕著に表れるため,一般のX線構造解析でされるような低角での強度測定では十分精度の高い測定がおこなえない.しかしながら高角の回析強度測定のみで膨大な測定時間の増加を招くことなく精度よい位置決定がおこなえることが明らかとなった. 今回決定されたシリコン原子のずれの度合いは,結晶内の遷移金属原子の原子間距離によって大まかに説明される.以上のことはこれらの化合物中でシリコン-シリコン原子間の結合に強い方向性,および結合距離を保とうとする性質があることを示唆するものである. また,MoSi_2,TiSi_2の弾性率を4K〜1200Kの温度範囲で測定した.室温における測定値はほぼ従来報告されていたものと一致した.弾性率の温度依存性に特に異常な振る舞いは見られず,これらの物質で見られる強度の逆温度依存性を弾性的な見地から説明することはできない.一方,この結果を原子間結合の方向性を考慮したモデルポテンシャルを表す力定数に置き換えることにより,温度の上昇とともに結合の方向性が弱くなっていることを明確に示すことができた.
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