ヘリウムイオン注入したステンレス鋼のレーザー溶接部におけるヘリウムバブルの挙動

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09650789
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 黒田 敏雄 大阪大学, 接合科学研究所, 助教授 (00107096)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 菊地 靖志 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (90005405)
• Keywords: ヘリウムバブル / ヘリウムイオン注入 / オーステナイトステンレス鋼 / レーザー溶接 / 数値計算 / 透過電子顕微鏡法 / 溶接部 / 溶接割れ

Research Abstract

本研究は8MeVのイオン注入装置を用いて、5MeVおよび6MeVでヘリウムイオン注入したSUS316Lステンレス鋼をレーザー溶接した場合のヘリウムバブルの生成挙動とレーザー溶接条件との関係を調べたものである。得られた結果を要約すると次のようである。
(1)レーザー出力が低い場合は溶接ビ-ドと母材との界面すなわち溶接ボンド部の溶接金属側に3-4μmの大きさのヘリウムバブルが発生する。レーザー出力の増加につれて溶接金属量が多くなり、ヘリウム濃度が低下するため、ヘリウムバブルは直径1μm以下と小さくなる傾向であった。数値計算の結果、粗大なヘリウムバブルは溶接金属中のヘリウム濃度が10appm以上で生じることがわかった。なお、ヘリウムを注入しない試料はヘリウムバブルは生じない。
(2)溶接熱影響部においても結晶粒界に直径0.2μm以下のヘリウムバブルが生成し、レーザー出力の増加とともにヘリウムバブル領域は増加した。
(3)透過電子顕微鏡観察を行った。その結果、溶接金属中に0.2μm以下の微細なヘリウムバブルがデンドライトセル境界に生成することが判明した。そしてそのサイズはレーザー出力の増加とともにヘリウム濃度が低下するにもかかわらず増加する傾向であった。
(4)イオン注入法によってヘリウムを導入した試料をレーザー溶接すると、ヘリウムバブルが溶接金属および熱影響部に発生する。そしてレーザー出力の増加および溶接速度の増加はヘリウム濃度を減少させるが、2.9appm,3.8appmのヘリウム濃度でも溶接金属中にヘリウムバブルと関連したデンドライトセル境界割れを生じることが判明した。

Research Products

• [Publications] Toshio Kuroda: "YAG Laser Welding of Stainless Steel Helium-Doped by Means of Helium Ion Implanting Technique" Proc.Int.Symp.Applied Plasma Science,LA,USA. 143-150 (1997)
• [Publications] 黒田敏雄: "原子炉ステンレス鋼溶接部におけるヘリウムバブルの挙動" 溶接学会溶接構造シンポジウム'97講演論文集. 101-108 (1997)
• [Publications] 黒田敏雄: "ヘリウムイオンを注入したステンレス鋼のレーザー溶接" プラズマ応用と複合機能材料. 61. 21-24 (1997)