1998 Fiscal Year Annual Research Report
天然高分子電解質複合ゲルのpH応答型膨潤特性を利用した薬剤の経口的放出制御
Project/Area Number |
09650880
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
崎山 高明 岡山大学, 工学部, 講師 (70170628)
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Keywords | 刺激応答性ゲル / 高分子電解質複合体 / 薬物送達システム / pH応答型膨潤特性 / 天然高分子 / デキストラン硫酸 / キトサン |
Research Abstract |
アミノ基を有する塩基性多糖キトサンと酸性多糖の複合体化により調製される高分子電解質複合ゲルはpH応答型の膨潤特性を示す。昨年度は、酸性多糖としてデキストラン硫酸を用いたゲルの膨潤特性とその内包薬剤の放出制御への応用に関して基礎的な検討を行った。本年度は、その検討を発展的に継続するとともに、他の酸性多糖の利用可能性についても検討を行った。その結果、コンドロイチン硫酸がpH応答型膨潤特性を示す複合ゲルの素材として利用可能であることを明らかにした。デキストラン硫酸/キトサン複合ゲルの膨潤特性に関しては、アミノ基を過剰とした場合に観察されるpH7近傍における著しい収縮現象についてさらに解析を進めた。ドナン平衡理論に基づく解析の結果、pH7近傍ではゲル内のpHがキトサンのアミノ基のpK_aに近い値でほぼ一定となっていることが明らかになり、この収縮現象がゲル内で遊離の状態にある過剰なアミノ基の脱プロトン化によるものであることが示された。さらに、高分子薬剤のモデルとして牛血清アルブミン(BSA)およびラクトフェリン(Lf)を複合ゲルに内包し、種々の条件下における放出挙動について検討を進めた。複合ゲルからのBSAの放出過程は、ゲルの体積変化の有無にかかわらず、単純な拡散方程式が適用可能であった。また、BSAのみかけのゲル内拡散係数はpHが6を超えると増加し、BSAの放出がゲルの収縮により促進されることが明らかになった。また、Lfの放出については、その等電点以上のpH8.8で長時間にわたって緩慢な放出が持続することが明らかになった。これは、Lfと複合ゲルとの間の静電的な相互作用によるものと考えられた。以上の結果、複合ゲルを用いた外部pHの変化に基づく高分子薬剤の放出制御の可能性が示された。
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Research Products
(1 results)