1998 Fiscal Year Annual Research Report
新奇な分光学的機能を有する金属錯体系の創製と生体システムプローブとしての応用
Project/Area Number |
09650885
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星野 仁 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (20124620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 恵美子 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (00241539)
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Keywords | 金属キレート / 近赤外分光 / 室温リン光 / 化学プローブ / 生体内ミクロ環境 / ジアミノベンゼン / 8-キノリノール |
Research Abstract |
本研究の目的は,生体内ミクロ環境場の認識と評価を行うための化学プローブを,"新奇な分光学的機能",(I)長波長近赤外領域における光吸収,(II)室温長寿命発光(リン光)を有する金属錯体系の開発をもって確立しようとするところにある.本年度の研究成果は, (1) 新たなO,N配位型近赤外発色機能配位子として,Bis(2-hydroxy-3,5-di-tert.-butyl-phenyl)amineに着目し,キレート生成反応とスペクトル特性について検討した.キレートのスペクトル形状は典型元素MgおよびZn(〜730nm)と遷移系列FeおよびCu(〜850nm)との間で明瞭に異なっており,電子遷移機構の相違が観察された.これによりd^8金属系(Ni,Pd,Pt)以外の多種のプローブキレートを用いることが可能となり,今後の研究の進展が期待される. (2) ミセルやリポソーム等の提供する「疎水的環境」を認識するビス(3,5-ジブロモ-1,2-ジアミノベンゼン)Pt(II)キレートについて,その機構論的研究を水溶液物性(構造形成,構造破壊,疎水的水和等)からのアプローチをもって遂行した.キレート周りの疎水的水和構造が破壊される尿素溶液において,キレートの近赤外吸収が増強されることを見出し,ミクロ環境場認識の本質がキレート-水間の相互作用にあることを推定している. (3) 室温リン光性キレート,8-キノリノール誘導体-Pt(II)のミクロ環境プローブとしての高機能化を目指して,いくつかの類縁配位子の合成を行った.それらの中で,4-Hydroxyacridine(4HA)が優れた発光性キレート(ex.396nm,em.448nm)を与えることを見出した.この発光は,糖鎖界面活性剤ミセル中で強く,その量子収率は0.068であった.牛胸腺DNAによる発光増感も確認し,インターカレーション効果の発現を推定している. 以上の成果を学術雑誌等へ発表すべく準備中である.
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