1998 Fiscal Year Annual Research Report
液中レーザーアブレーションによる固体試料の直接溶液化を用いたICP質量分析の研究
Project/Area Number |
09650889
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 智一 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (40236609)
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Keywords | ICP質量分析法 / レーザーアブレーション / 固体試料 / 直接分析 / 微量分析 / ファインセラミックス / 鉄鋼試料 |
Research Abstract |
これまで検討してきた液中レーザーアブレーション(LA)/ICP-MSでは精度の良い分析が可能であるが、10分程度のレーザー照射時間を要し、また高沸点元素における選択的蒸発のため定量時には補正が必要であった。これらの問題点を改善するため、気相中で試料表面にレーザーを照射し、生成した試料蒸気をArにより搬送して溶液中に溜め、この溶液を通常の試料導入系のICP-MSで標準溶液を用いて分析する方法を新たに検討した。 本法におけるレーザー照射時間は4分足らずで、液中LAに比べ迅速になった。また、レーザー照射範囲に伴う試料形状の制約が少なく、溶液量の減少による高感度化の可能性も見出された。日本鉄鋼協会の鉄鋼標準試料である微量元素シリーズを用いて作成した試料溶液と試薬から調製した標準溶液との比較を行った。鉄鋼試料中の含有率に対して、作成した溶液中の各目的元素の信号強度を直接プロットした場合、各元素とも標準溶液による検量線とは必ずしも一致せず、測定点もばらついた。これは、溶液中での試料粒子の捕集量が溶液作成時毎に若干異なるためであった。マトリックスのFeを内標準として強度比をプロットしたところ、Co及びMoは標準溶液による検量線とよく一致した。Moのような高沸点元素の場合、気層中のLAでも選択的な蒸発挙動が観測されるが、本法ではその傾向を軽減することが可能であった。しかしSbのように傾きが多少小さくなる元素も見出された。窒化ケイ素焼結体分析への応用では、定量値、測定精度ともにかなり良好な結果を得ることができ、極めて短時間でファインセラミックス焼結体を分析できる可能性が見出された。今後、溶液中へのガス吹き込み部の改良等によって粒子捕集時の安定性や効率が増大すれば、本法はより一層の定量性が期待でき、通常のLA/ICP-MSが適用困難な固体試料の分析においても十分な実用性が得られるものと思われる。
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