1998 Fiscal Year Annual Research Report
トレーサビリティ確立の手段としての安定同位体希釈/質量分析法の評価に関する研究
Project/Area Number |
09650891
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 秀治 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40207121)
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Keywords | 安定同位体希釈 / ICP質量分析法 / トレーサビリティ / ガリウム / アンチモン / 活性アルミナ前濃縮 |
Research Abstract |
トレーサビリティ(究源性)体系の確立は分析化学における正確さの確保のため重要な課題であり,同位体希釈/質量分析法はこの目的のために最も適した分析法と考えられる。 前年度は生物・環境試料中のガリウムのトレース分析を目的に,Ta炭化物被膜処理黒鉛管を用いる黒鉛炉原子吸光分析法および同位体希釈/質量分析法を研究した。本年度は,最近の環境基準において要監視項目の一つとして設定されたアンチモンを取り上げ,同位体希釈/質量分析法による河川水および生物標準試料中の微量アンチモンの定量法を詳細に検討した。^<121>Sbおよび^<123>Sbについて,各種鉱産の影響,検量線の直線性,同位体比を検討し良好な結果を得た。それぞれの検出限界(3σ)は9および6pptであった。同位体希釈法におけるスパイク(98.73%^<121>Sb)添加量を添加後の同位体比が0.25〜0.50の範囲に入るように設定すると理論値と実測値がよく一致した。次に,活性アルミナ充填ミニカラム(内径1.5mm,長さ7cm)を用いてSbの濃縮効果を検討した。標準液では最大550倍,河川水実試料では14〜100倍に濃縮することができた。これらの基礎的検討をもとに,安定同位体をスパイクした河川水試料(3種)または生物標準試料(8種)のアンチモンを活性アルミナ前濃縮し,ICP-MS装置にオンライン接続すことによって同位体希釈/質量分析を行った。後者試料に対しては報告値とほぼ一致する値が得られた。同位体希釈法では回収率が問題とならない上,本前処理法により微量アンチモンを共存成分から分離・濃縮できるので,より正確かつ高感度な測定が可能となった。
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