1998 Fiscal Year Annual Research Report
走査型トンネル顕微鏡によるリチウム二次電池炭素負極表面反応の解析
Project/Area Number |
09650903
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
安部 武志 京都大学, 工学研究科, 助手 (80291988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 稔 京都大学, 工学研究科, 助教授 (80243046)
小久見 善八 京都大学, 工学研究科, 教授 (60110764)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / リチウム二次電池 / 黒鉛 / リチウム挿入脱離 / その場解析 / 表面被膜 |
Research Abstract |
リチウム二次電池の炭素負極上では充電初期に溶媒の分解によりリチウムイオン伝導性の表面被膜が形成される。この表面被膜は炭素負極の充放電特性、安全性に対して重要な役割を果たしているが、その組成、形態並びにその形成機構は明らかになっていない。本研究では電気化学走査型トンネル顕微鏡(ECSTM)を用いて、有機溶媒中で分極された炭素電極表面の形態変化を観察、解析することで炭素負極上での被膜形成反応を明らかにすることを目的とした。試料として劈開により容易に原子レベルで平坦な表面を得ることができる高配向性熱分解黒鉛(HOPG)を用いた。本年度は分子構造の異なる溶媒系並びに添加物を加えた溶媒系でのSTM観察を行った。 炭酸プロピレン(PC)のメチル基をフッ素化したトリフルオロ炭酸プロピレン(TFPC)中では、昨年度PC中で観察されたような激しい剥離は起こらず、試料電位を0.5Vに下げるとステップの輪郭に沿って高さ数+nmの隆起構造が形成され表面は安定化された。すなわち、PC同様に大きな分子構造を持つTFPCで溶媒和されたLi@@S1+@@E1が共挿入すると黒鉛層の剥離を引き起こすが、電子吸引性のフッ素原子のため還元されやすく、速やかに分解されて有効な表面皮膜を形成すると考えられる。 一方、PCにLi@@S1+@@E1に選択的に溶媒和する12-crown-4を添加した溶媒中では、昨年度炭酸エチレン(EC)系溶媒中で見られたように約1Vで高さ約1nmの丘状構造の出現に続いて、それがさらに低電位で不定形の隆起構造に変化していく様子が観察された。このような形態変化は、溶媒和イオンの層間への共挿入反応とその分解反応に対応するものと考えられる。従って、12-crown-4を添加した系では、12-crown-4の配位したLi@@S1+@@E1が選択的に層間に共挿入することにより分解反応を受け、それにより安定な表面皮膜が形成されることが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Atsushi Funabiki: "impedance Study on the Electrochemical Lithium Intercalation into Natural Graphite Powder" Journal of the Electrochemical Society. 145・1. 172-178 (1998)
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[Publications] 稲葉 稔: "リチウム二次電池におけるin situラマンおよびSTM測定法" 電気化学. 66・10. 986-991 (1998)
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[Publications] Atsushi Funabiki: "Influence of Defects on the Phase-Boundary Movement in a Stage Transformation in Lithium-Graphite Intercalation Compounds" Carbon. (発表予定). (1999)
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[Publications] Zempachi Ogumi: "Electrochemical Lithium Intercalation within Carbonaceous Materials-Intercalation Processes" Bull.Chem.Soc.Jpn.71・3. 521-534 (1998)