1997 Fiscal Year Annual Research Report
グリコサーマル法による熱力学的に不安定な複合酸化物の合成
Project/Area Number |
09650922
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 正志 京都大学, 工学研究科, 助教授 (30151624)
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Keywords | 準安定相 / グリコサーマル法 / 希土類 / 複合酸化物 / 結晶成長 / 欠陥 |
Research Abstract |
当報告者らが開発し,種々の酸化物微結晶の合成法であることを明らかにしているグリコサーマル反応が,準安定相複合酸化物の一般的な合成法となり得ることを示すことを目的として,まず,結晶構造決定を終えている新規な準安定相の複合酸化物である六方晶LnFeO_3の生成過程を詳細に検討した。この生成物は希土類酢酸塩と鉄アセチルアセトナートの反応で生成するが,クエン酸鉄等を用いると,マグネタイトが生成し,また希土類アセチルアセトナートを用いると希土類鉄ガ-ネットが生成した。この結果は,グリコサーマル条件下では,配位子の熱安定性が原料の反応性を支配していることにより説明できた。次に,生成物の形状を検討し,反応温度が低くなるほど粒子径が小さくなることを見出した。この結果は,グリコサーマル反応による希土類アルミニウムガ-ネット等の合成の場合には,反応温度により粒子径は大きく変化しないことと好対照をなす。この違いは,六方晶LnFeO_3の場合,高温になるほど相対的に不安定性が増加し,溶解度が増加するので,臨界核発生濃度も増加し,結晶核発生頻度が低下するためと考えられた。また,この系でガ-ネットが生成しないのは,六方晶LnFeO_3の結晶核発生温度が低いためと考えられた。この系に他のガ-ネットを種結晶として添加した場合には,希土類鉄ガ-ネットが生成した。これはグリコサーマル反応では核発生が困難であるが,熱力学的に不安定なアルコキシドの熱分解が直接結晶成長に関与しているので,結晶成長には大きな推進力を持つためと考えられた。また,種結晶上に成長した六方晶LnFeO_3の結晶中に刃状転移位認められた。グリコサーマル法では容易に欠陥が発生するが,この場合,種結晶と生成結晶間の格子定数の違いによる歪みを解消する役割を持っているものと考えられた。
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Research Products
(1 results)