1998 Fiscal Year Annual Research Report
ゾル・ゲル法によるFRAM用強誘電性ビスマス系薄膜の合成と誘電的特性
Project/Area Number |
09650928
|
Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 卓 湘南工科大学, 工学部, 教授 (70023265)
|
Keywords | ゾル・ゲル法 / FRAM / 強誘電体 / ビスマス系薄膜 / 金属アルコキシド / メモリー |
Research Abstract |
近年、強誘電体薄膜を用いた不揮発性メモリ(FRAM)の研究が盛んに行われている。その中でBi層状構造強誘電体薄膜は繰り返しの分極反転による疲労がほとんど生じないという特徴を有し、種々の方法で作製されている。我々は今までにSrBi_2Ta_2O_9(SBT)薄膜をゾル・ゲル法により作製し、前駆体溶液の混合方法の違いやアセチルアセトンの添加が配向性に大きく影響を及ぼすことを報告した。本研究では金属アルコキシドを混合することによりSBT前駆体溶液を調製し、ゲル膜の初期焼成段階での水蒸気の導入が薄膜の微構造および誘電特性に及ぼす影響について検討した。 出発原料となる金属アルコキシドはSr(OBu)_2,Bi(OiPr)_3,Ta(OEt)_5をそれぞれ用いた。組成はSr_<0.7>Bi_<2.2>Ta_2O_9とし、濃度は10wt%となるようにSr(OBu)_2とBi(OiPr)_3を2-メトキシエタノール中に溶解し、2h攪拌した。その後Ta(OEt)_5を所定量添加し、さらに2h攪拌しSBT前駆体溶液とした。また、アセチルアセトンの添加、無添加での比較も行った。得られた前駆体溶液をスピンコーティングし、550℃〜750℃で1時間RTAにより本焼成しSBT薄膜を得た。水蒸気はスピンコーティング後、150℃で10〜60分間流した。得られた薄膜の結晶性、配向性をXRD、微構造をFE-SEM、強誘電特性をRT-66Aにより調べた。 600℃で焼成した薄膜は(115)面を最強線とする回折ピークが確認され、SBT単相となった。また、前駆体溶液にアセチルアセトンを添加することにより(00l)の回折ピークが強く確認され、c軸に強い配向性を示した。このことから、アセチルアセトンが前駆体溶液中の構造に非常に影響を与え、薄膜の配向性の変化が生じたと考えられる。150℃、10分間の水蒸気の導入は焼成後の結晶性への影響はほとんど確認できなかった。しかし、水蒸気を長時間導入するとc軸に優先配向したSBT薄膜となり、前駆体溶液中にアセチルアセトンを添加した場合と類似した回折図形を示した。また、水蒸気の導入量の増加に伴い板状の粒が成長する傾向にあった。一方、アセチルアセトンを添加したときの微構造は200〜300nmの粒と約50nm程度の微小な粒からなるパイモーダル構造となり、板状の粒は確認されなかった。このことよりどちらもc軸に優先配向した薄膜であるが前駆体溶液の調製プロセスや焼成プロセスの違いが焼成後の微構造に大きく影響を及ぼすと考えられる。アセチルアセトン添加して作製した薄膜の強誘電特性は2Pr=14.1μC/cm^2,2Ec=91.1kV/cmと比較的良好な値を示した。
|
-
[Publications] Takashi HAYASHI: "Preparation of Barium Strontium Titanates by Vapor Phase Hydrolysis of Precusors Via Modified Alkoxide Route" Ceramic Transactions. 88. 177-182 (1998)
-
[Publications] Takashi HAYASHI: "Influence of Bi Exess and Sr Deficient Compositions on the Microstructure and Dielectric Properties of Sr_<1-x>Bi_<2+y>Ta_2O_9 Ferroelectric Ceramics" J.Korea.Phy.Soc.32. 1195-1197 (1998)
-
[Publications] Takashi HAYASHI: "Preparation and Dielectric Properties of SrBi_2Ta_2O_9 Thin Films by Sol-Gel Method" J.Europ.Ceram.Soc.(in press). (1999)