DNA2重らせんをシミュレートした可逆的超高密度光記録材料

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09650936
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 稲木 良昭 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80029230)
• Keywords: DNA / チミン / 光二量体 / 光二量化 / 光解裂 / 分子配向 / フイルム / 可逆的光記録材料

Research Abstract

本研究は、DNA中のチミンの制御された分子配向をシミュレートした誘導体を分子設計し、その光二量化反応性および可逆性との関連性を検討して、超高密度・超高速の可逆的光記録材料の実現を目指している。
DNAらせん中でのチミンの光反応を光記録材料として利用するためには、固体フイルムでの反応が必要である。フイルムを形成するチミン化合物の光反応の研究結果から、光可逆性の発現には、チミンの配向が重要な因子であることが明らかになった。固体状態でのチミン誘導体の光二量化反応の研究結果から、光二量化反応ではチミン塩基が回転して光二量体を与えることが明らかとなった。このことは、チミンの光二量化では、チミン塩基の配向とチミンが配向する自由度の二つが重要な因子であることを示している。
チミン光二量体には四つの異性体が存在するが、その中には、解裂反応が容易なものとそうでないものがある。たとえば、DNAではチミンは配向しているのでcis-syn型の光二量体を生成するが、cis-syn型は容易に光解裂を起こす。しかし、フイルム中でチミンの配向がランダムな化合物では、光解裂が困難な異性体が蓄積し、可逆性が消滅してしまうことが解明された。
チミンの配向をDNAと同じcis-synに固定化した環状チミンニ量体を設計して、光反応を検討した。その結果、この化合物は溶液、フイルムなどの状態を変化させても光可逆性が実現されることを確認した。光反応性は二つのチミンを結合部の構造に依存することが明らかになり、プロピル基の場合には非常に高い反応性と可逆性が示された。また、この環状チミンニ量体を高分子に固定化する誘導体の合成にも成功し、大きな成果が得られた。

Research Products

• [Publications] N.Tohnai,et al.: "Photodimerization of Thymine Derivatives in Single Crystal" J.Photopolymer Science and Technology. 11・1. 59-64 (1998)
• [Publications] N.Tohnai,et al.: "Photoactive and Inactive Crystals of 1-Alkylthymine Derivatives" Bull.Chem.Soc.Jpn. 72・4. (1999)
• [Publications] N.Tohnai,et al.: "Photodimerization of 1-Alkylthymines Crystallized from Acetonitrile Solution" Bull.Chem.Soc.Jpn. 72・5. (1999)