1997 Fiscal Year Annual Research Report
エピセレノニウムイオン中間体の単離および炭素-炭素結合生成反応への利用
Project/Area Number |
09650957
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
年光 昭男 京都大学, 化学研究所, 助教授 (60127107)
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Keywords | エピセレノニウムイオン / トリ-t-ブチルフェニル基 / 炭素-炭素結合生成反応 / キラル炭素 |
Research Abstract |
エピセレノニウムイオン中間体の単離を目指した研究戦略の構築にあたり,未だ明らかにされていなかった重要な要素があることを見出し,その詳細について検討を行った. 申請書にも記載したが,申請者らは既に,キラルエピセレノニウムイオンを経由するキラル炭素上での求核置換反応の立体選択性を測定することにより,同中間体のラセミ化反応速度を評価できることを明らかにしている.同中間体のラセミ化と主要な分解反応とは機構がほぼ同じであることも明らかにしているので,この立体選択性は,中間体の単離しやすさの評価に重要な意味を持つ. 今回,セレン原子に電子吸引性の置換基を持つアリール基の結合したキラルエピセレノニウムイオンを経由する上記置換反応を行い,4-トリフルオロメチルフェニル基のように立体的に小さなアリール基の場合でも高い立体選択性で置換反応が進行することを見出した.さらに,2および2,6位に同置換基を有する基質についても検討し,電子吸引性置換基の効果はかさ高い置換基の効果と加成性があることも明らかにした.電子吸引性の置換基の代表としてトリフルオロメチル基,かさ高い置換基としてt-ブチル基を選び,上記置換反応の立体選択性を比較した.その結果,かさ高い置換基を有する基質の方が,高い選択性を示すことがわかった. 以上の知見より,本研究の目的であるエピセレノニウムイオン中間体の単離のためには,かさ高い置換基を主力に,電子吸引性の置換基を補助に用いたセレン基の設計が戦略的に有力との結論に達した. 来年度はこの戦略に沿って設計したアリールセレン基を合成し,エピセレノニウムイオン中間体の単離を実現し,さらにその反応についても検討する予定である.
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