1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09650996
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金谷 利治 京都大学, 化学研究所, 助教授 (20152788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 幸次 京都大学, 化学研究所, 助手 (80189290)
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Keywords | ポリビニルアルコール / 高分子ゲル / 相分離 / 小角中性子散乱 / 光散乱 / 共焦点レーザー顕微鏡 |
Research Abstract |
ポリビニルアルコールの水とグリセリン混合溶媒系でのゲル化について、共焦点レーザー顕微鏡、光散乱、X線散乱、中性子散乱測定により、ゲルの構造とその形成過程を調べた。この系では低温で作製したゲルは透明であるのに、高温で作製したゲルは白濁している。また、この白濁の程度は水とグリセリンの混合比により大きく左右される。この結果は定性的には、結晶化による高分子網目の形成と液-液相分離が競合して起こると考えると説明がつく。本研究ではこの推論を定量的に確かめた。液-液相分離を直接確かめるために、高温均一溶液から、25Cに急冷した直後からの時間分割光散乱測定を行なった。その結果、ゲル化以前に光散乱曲線は散乱ベクトルq=1.1A^<-1>付近にブロードなピークを示し、その強度は指数関数的に増大した。このことより、ゲル化に先だってスピノ-ダル分解型の相分離が起こっていることが確かめられた。相分離が進むと、系が強く白濁し、光散乱測定が不可能になる。そこで、白濁試料の相分離構造は共焦点レーザー顕微鏡観測により決定した。それより、相分離構造はゲル網目が生成したあとも、その大きさを成長させ、初期のサイズに比べ3〜4倍の大きさとなることが明かとなった。さらに小角中性子散乱測定によりゲルの架橋点である微結晶の生成過程を調べ、目視観測より予想したこの系のゲル化において「結晶化による高分子網目の形成と液-液相分離が競合して起こる」という仮説を定量的に証明することができた。 さらに、水とグリセリンの混合比を変え、相分離の速度およびゲル網目形成速度を観測した結果、ポリビニルアルコールの分子内水素結合とポリビニルアルコールと水との間での水素結合の強さの兼ねあいによりゲル化の速度、ひいてはその最終構造が決まっていることが明かとなった。よって、今後ポリビニルアルコールゲルの構造制御には水素結合の抑制と促進をコントロールする第三成分の添加が有用であるという結論を得た。
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