1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09651032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
村松 容一 東京理科大学, 理工学部, 助教授 (70266922)
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Keywords | 開口性断裂 / 透水性 / 自己閉塞作用 / 流体包有物 |
Research Abstract |
地熱発電の出力規模を決定する生産井の噴出量は,地熱流体が流動する開口性断裂の透水性に依存する。地熱流体からの熱水性鉱物の生成による自己閉塞作用により,この透水性は断裂形成期から今日に至る過程で次第に低下し,現在も進行している可能性がある。これを解明するため,岩手県葛根田地熱地域の浅部生産井Well-4(掘削深度1448m)の噴気試験時に噴出した岩片について,熱水性鉱物の鉱物学的特徴を調べるとともに,流体包有物の加熱冷却実験を実施した。 本噴出岩片は多孔質の熱水性鉱物であり,緑簾石・ぶどう石・ワイラケ沸石・自形石英で構成されている。EPMA分析によれば,緑簾石は最大25%のピスタサイトを含み,またぶどう石は微量のMnとMgを,ワイラケ沸石はNa_2Oを3.59%含有する。当生産井の全深度にわたる熱水性鉱物の分布および温度検層結果によれば,本岩片は地熱流体の流入箇所付近に分布する岩石が削られた後,地熱流体に伴って地表に噴出したものであると判断される。石英中の流体包有物の最低均質化温度は228℃を示し,噴出流体の地化学データより算出された地化学温度225℃,および静止時の検層温度224℃と非常に良く一致し,流入箇所の流体温度は約225℃と推定される。さらに,多数の深度における熱水性鉱物の共生組織および均質化温度測定結果から,石英の生成温度は225〜250℃,石英より早期に晶出した緑簾石の生成温度は300℃以上であると推定される。本研究によって,地熱流体が地層中の開口性断裂を流動する過程で,温度の低下とともに緑簾石・石英・ぶどう石が晶出し,断裂の透水性は次第に低下していったことが予想できた。
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