環境ストレス耐性イネ作出への新戦略-適合溶質ベタインの利用-

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09660002
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 岸谷 幸枝 東北大学, 農学部, 助手 (60005634)
• Keywords: 形質転換イネ / グリシンベタイン / 低温耐性 / 熱耐性

Research Abstract

イネへの環境ストレスに対する耐性機構付与の一例として、ベタイン生合成経路を持たないと言われているイネへのベタイン生合成経路を付与するという本研究課題の今年度計画に従って、第1段階の酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子(大腸菌由来のbetA)を導入した形質転換イネについて検討した。
このbetA遺伝子は高等植物で発現できるように改変して、葉緑体で発現させてある。今回評価したbetA導入イネ系統は理由はいろいろ考えられるものの、期待した程のベタイン量を生成出来なかった。むしろ、遺伝子を導入したことによる初期生育の不良が顕著であった。そして、このベタイン生成量(0.4〜1.2μmolg^<-1>DW)はストレス誘導されたオオムギで集積される量の100分の1程度の量である。イネの基質のコリン量はオオムギ並みであるのに、そのコリンの10分の1程度の生成量であった。しかしながら、この程度の量でも、厳しい高温や低温処理時に弱い光を当てた場合など、条件によってはストレスによる障害を原品種より緩和した。このことは、イネでもっと多量に生成させることが出来たなら、さらにストレス耐性を付与できる可能性を示している。
そこで、イネにコリンを酸化する最初の酵素をコードする遺伝子を導入する場合には、やはり、高等植物由来のCMO(コリンモノオキシゲナーゼ)をコードする遺伝子を導入してみる必要があると考えられた。