1998 Fiscal Year Annual Research Report
土壌のレオロジー的環境に対する根の応答に関する比較作物学的研究
Project/Area Number |
09660011
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
井上 直人 信州大学, 農学部, 助教授 (80232544)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 基之 信州大学, 農学部, 助教授 (90172840)
|
Keywords | 根 / イネ / 土壌 / 直播 / 定着 / 物理性 / 粘性 / 回旋運動 |
Research Abstract |
水稲の土壌の粘性に対する成長や運動に種・品種間で差があることがわかってきたが、、本研究では水稲やソバの作物を用いて土壌のレオロジー的環境とそれに対する応答を分析することを通じて、不良土壌条件下でも根系を発達させることのできる生理生態的条件を検討することが目的である。今年度は粘弾性の計測、水稲における根の運動の調査と内生ホルモンの測定、ソバの根系の形態的把握法の開発を行った。 粘性は寒天やゲランガム培地の濃度を変化させて、調整し、水稲の種子が沈まない程度の10-20CP程度の弱い粘度が適当であることを示した。種子根の付け根1cmのところに注目し、そのうねり具合を回旋性の指標として、調査することにより、効率的に運動の調査ができた。さらに、内生ホルモンのうちで接触ホルモンであるエチレンに注目し、品種間差異を見た。種子根が短い品種ほど発生量が多いことがわかった。また種子根が物理性の高い培地に接触すると伸長量が低下するが、同じ程度の回旋運動をする遺伝子型の場合は伸長量が小さいほど湛水土壌表面直播における定着率が高いことがわかった。根は粘弾性物質に対して回旋運動と伸長量の2つの形質を変化させ、生態学的には前者が一次的要因、後者が二次的要因として重要である。なお、種子根では回旋運動が明瞭に発現するが、その他の根では20CP程度の弱い粘性の培地ではそれが発現しないこともわかった。 ソバにおいては根系の構造をフラクタルモデルやパイプモデルで記述し、根系のパイプが主根に配置するタイプ、側根に集中するタイプとあることがわかった。前者の品種はネパールの乾燥地帯に由来するものであることから、不良環境に適応した根系発達の特徴であると推察された。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] Inoue et l.: "Ecological signification of root tip rotation for seedling establishment of Orvza sativa L." Ecol. Res.14. 55-62 (1999)
-
[Publications] 井上直人ら: "イネ種子根のらせん生長および伸長量と湛水土壌表面直播における苗立ち性との関係" 根の研究. 7. 97-100 (1998)
-
[Publications] Arai・Inoue et al.: "Evaluation of screening methods for higer seedling establishment rate of direct seeded nice on sailsry" Jpn.J. Tropical Agr.43印刷中. (1999)
-
[Publications] 荒井・井上ら: "イネ湛水直播における高苗立ち性品種の簡易検定法の開発とスクリーニング" 北陸作物学研究. 34印刷中. (1999)
-
[Publications] 荒井・井上ら: "水稲湛水土壌表面直播における高苗立ち性にかかわる種子根のらせん生長の簡易検定法" 日本育種学雑誌. 48. 301-307 (1998)
-
[Publications] Hagiwara・Inoueら: "Allometry among rotts,leaves and flower clusters in commen buckwhen't" Fagopyrum. 15. 29-34 (1998)
-
[Publications] 中道・井上・俣野: "ダツタリバ根系の立体配置の解析手法" 北陸作物学会報. 33. 121-125 (1998)
-
[Publications] Hagiwara・Inoue: "Eco-physiological meachanism of the occureiice of floaling seedling of rice in flooded paday field." Asian Crop Science 1998. 309-312 (1998)