1998 Fiscal Year Annual Research Report
赤色系シンビジウムの温度によるデイファレンシャルな花色発現調節機構
Project/Area Number |
09660025
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大野 始 静岡大学, 農学部, 助教授 (20126840)
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Keywords | シンビジウム / 花色発現 / アントシアニン / 唇弁 / 高温 |
Research Abstract |
主要な花色素の1つであるアントシアニンの生成は一般に低温や紫外線により促進される。代表的な鉢物花卉の1種であるシンビジウムにおいても,がく片や花弁のアントシアニン生成は低温によって促進されるが,花弁の形態が変化した唇弁においては逆に低温で抑制され,高温で促進される。この唇弁におけるアントシアニン色素による発色パターンが高温処理開始時の花蕾の発育ステージ(蕾の大きさ)により大きく変化する興味深い現象が見い出された。そこで,当初の計画を変更し,高温による唇弁の発色パターンの変化と花蕾の発育ステージとの関係を調べた。 その結果,高温により唇弁の花色発現が促進されるのは花蕾の発育ステージの比較的早い段階であり,発育ステージが進むほど高温による促進効果は低下し,ある段階以上に発育の進んだ花蕾では高温の効果は見られず,低温と同じ発色を示すことが,主として唇弁にアントシアニンを生成するルビーアイズ,ゴールデンスター,で明らかとなった。同様の結果は赤色系小型シンビジウムのサザナミ‘ハルノウミ'や2枚の花弁も唇弁化しているバレーフラワー‘スリーリップ・メルヘン'でも得られた。さらに,唇弁における花色発現の促進は数日間の比較的短期間の高温で誘導されその後は低温に移しても高温の効果が消失せず,高温によりアントシアニン生成の促進が不可逆的に誘導されることも示された。なお,当初予定していたアントシアニンの前駆物質処理や前駆物質含量の測定などに基づいたアントシアニン合成経路上の温度による調節ステップの推定は,今後の研究の展開に待つこととした。
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