1997 Fiscal Year Annual Research Report
絹繊維への金属イオンの吸着及び離脱に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09660060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University Junior College |
Principal Investigator |
中嶋 哲生 光華女子短期大学, 生活学科, 教授 (70175496)
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Keywords | 絹繊維 / 金属イオン / 吸着 / 離脱 / 塩化第二銅 |
Research Abstract |
試料としては、現行蚕品種の生糸を、ソーダ灰にて90〜95℃で2時間精練したものを用いた。金属イオンとしては、和光純薬製特級試薬塩化第二銅の2水和物(CuCl_2・2H_2O)をイオン交換水に溶かして用い、5.0×10^<-3>、12.5×10^<-3>、25.4×10^<-3>(mol/l)の3種類準備した。これらの溶液の最大吸収波長は、813.6nmであり、濃度と吸光度の関係は次式に示すように非常に良好な直線を与えた。Y(mol/l)=8.2×10^<-2>X(Abs)+1.42×10^<-4>導電率は、薄い方から1.03、2.1、4.3(mS/cm)であった。また、pHは薄い方から、4.83、4.62、4.43であった。 これらの溶液30ml中に上記絹試料10mgを室温(16〜18℃)にて24時間浸漬した後、イオン交換水でよく洗浄し風乾して用いた。乾燥後の試料は薄緑色を呈していたが、処理浴濃度の違いによる試料の色づき具合に肉眼的観察による顕著な差異は認められなかった。この時の残浴の813.6nmにおける吸光度及び導電率には、初浴との差は認められなかったが、pHは薄い方から4.52、4.44、4.31と変化した。 この処理した絹試料を1mg精秤し、30℃と20℃における、酢酸でpH4に調整したC.I.Acid Orange7の5×10^<-5>mol/l濃度溶液3ml中で15分間染色したときの吸着量の差異を求めてみると、30℃のときは薄い方から、27.5×10^<-3>、26.9×10^<-3>、26.9×10^<-3>(mol/繊維kg)、20℃の時の一番濃い溶液の時は、22.4×10^<-3>(mol/繊維kg)であり、無処理絹試料の吸着量(30℃:31.2×10^<-3>mol/繊維kg、20℃:24.6×10^<-3>mol/繊維kg)より少なくなり、これは先に吸着している金属イオンが後から入ってくる染料の吸着を阻害することによって生じるものと考えられる。またこの時の染浴への金属イオンの脱落は、残浴の可視部吸収スペクトラム及び最大吸収波長を見る限りにおいては変化は見られず、ないものと思われる。
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